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5月20日(日)
これって何の木の花だかわかります? よく通る新宿副都心の高層ビル街に植えてある大木に今日見事に花が咲いているのに気がついた。もう10年近くここに来ているのだが、花に気づいたのも今日がはじめてである。 このあたりは桜の木も多く、桜にばかり気をとられていてこの木にはきづかなかった。 白い細かな花がびっしりと咲いていてきらきらとしてとてもきれいだ。呼び止められたように立ち止まってしまった。 何の花かさっそく調べてみたのだが、間違っていなければ、 樟(くす)の木の花 ではないかと思う。木の種類を調べるのには、葉っぱの形と葉脈をしらべると分かるというが、多分そうではないかと思う。 「今まで気づかなくてごめんなさい……」と言って写真におさめたのだった。 俳人の石田郷子さんと青葉の季節に雑木林をあるいていたときのことだ。ふっと郷子さんが立ち止まって、 「……今日は樟若葉の匂いがしないな……」と言う。 「ええっ、樟若葉に特有の匂いがあるの?」と聞けば、 「あるよ」と答える。そして 「いつもこのあたりを歩くときまってこの季節、樟若葉の匂いがするのにどうしたんだろう」と言う。 こんなに沢山さまざまな木があるのに、どれが樟でどれが椋でどれが樫でどれが欅でいったい……とわたしは思ってしまう。 石田郷子さんという人はわたしよりもはるかに木や獣に近い人だと思うことが多い。一緒にあるいているとわたしには全然聞こえてこない鳥の声が聞こえる人だ。それが「ひたき」の声であるか、「やまがら」の声であるか、あるいは百舌」の声であるか瞬時に聞き分けられるのだ。 木の匂いや鳥の声に気づいたときの石田郷子さんは本当に嬉しそうだ。 何かを知っている嬉しさではなくて、親しいものが自分に挨拶をしたような嬉しさなのだ。 都会人であることが好きなわたしは全然ちがうなあ……ってよく思う。 石田郷子さんの俳句はそういう意味で、自然に生きている木や花や獣たちさまざまなものとの喜びの交感があるのだ。 今日のこの花も郷子さんに聞けばいっぱつで分かると思うのだけど。 来ることの嬉しき燕きたりけり 時雨くることを知りゐる犬の耳 目を張つて憩ふわたしもとんぼうも 思ふことかがやいてきし小鳥かな 小鳥くる昔話をきかせてよ 稲子見る稲子に貌の似てくるまで さへづりのだんだん吾を容れにけり 堅香子にまみえむ膝をつきにけり 以上、『石田郷子作品集1』より。 (再版しました)
by fragie777
| 2012-05-20 21:54
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Comments(2)
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