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2月1日(水)
それぞれが奇麗な色をしていることに気づき、写真に撮ってみた。 (ヒマだったわけではありませんが…) ふらんす堂の仕事場のとなりのとなりがコンビニのセブンイレブンである。 今日こそはおでんを食べようと決めていた。 そのためには12時になる前にセブンイレブンに到着していなくてはいけないのである。 なぜかっていうと昼時になると近隣の中学校、高等学校、短期大学、音楽大学の生徒諸君がわっと集まってきて、狭いコンビニに溢れかえるのである。 「今日はゼッタイ早く行ってあの子たちに勝たなくっちゃ……」。ってわたしが言うと、 愛さんがフフフって笑って、 「そうですね、わたしたちはあの子たちのことを「イナゴ系」って呼んでます。」と言う。 大群で押し寄せて、食べものをすべてかっさらっていくから、ということである。 なあるほど! 上手いことを言う。確かに彼らに後れをとると食べるものが見事に無くなっている。 で、わたしの行動は素早かった。12時ジャストに走って行って、「イナゴ系」に見事に勝ったのである。 いいこと、よくお聞き! おばさんはね、まだまだアンタたちに負けませんことよっ。 新刊句集を紹介したい。 大槻和木(かずき)句集『消印』(けしいん)。 俳誌「銀化」(中原道夫主宰)に所属する女性俳人である。 まず手にとって装丁のカッコよさに驚く。なにしろ洒落ている。主宰の中原道夫さんの装丁である。「消印」という句集名にふさわしく本物の消印がレイアウトされているのだが、その消印は日本のものではなくてPARISという文字があり、フランス国のものというのがヤラレマシタね。横文字があしらわれ、消印四つをグラデーションに置き、すべての処理がうまい形に按配されなんとも心にくい。赤と緑と白をまず感じさせる色の配合だが、おさえた色となっているので、下品になっておらず絶妙なバランスである。中原さんの装丁のものとしては従来のものよりぐっと渋い感じだが、わたしはこのくらい抑えた色のものがいい。素晴らしい仕上がりだと思う。 一枚の切手の旅や巴里祭 この一句より、句集『消印』ははじまる。この一句の世界に装丁がひびき合っている、というわけだ。 中原道夫さんが2005年に銀座で開いた「エンタイア展」(entire=使用された切手のついた宛名、消印など完全な封筒)を見て、それに魅了された大槻和木さんが、そういうイメージの句集にしたいということで「消印」という句集となった、と中原さんの序文にある。見返しにはそれらの封筒が美しい色であしらってあり、すみずみまでのこころくばりである。 菊枕ぐつすり死んでをりしかな なやむほどのことかとなやむさくらどき 初鏡はなれてみてもおなじこと まるまつてをればすむこと露の玉 国産の月こそよけれ旅枕 つきささる若さのありてダイビング 水馬の水面やぶらぬちからかな 障子張り洗ひたてなるわが心耳 麨にむせびふみとどまる此の世 振り出しにもどらうと思(も)ふ炭をつぎ 句稿の選を引き受けてやってみると、毎月七句投句して来て削られ既に選られているだけに、水準の高さに目を見張った。元来面白い作品を書く人だとは感じてはいたのだが、作者像が立体的に見えて来ると同時に“天然”の可笑しさに何度もズッコケたり、ガハハと笑った。ヘップバーンのような巨きなサングラスをかけて澄まして句会にやって来る彼女が、これほど茶目っ気があり、“傑作”な人だったとは……。大声を出して笑う句集と銘を打って世に出そうとも思ったくらいだ。余りにも可笑し過ぎて、重石として少しシリアスな方向のものを後半では多く残すことでバランスを取ることにした。 夏蝶を追へばわたしに出会ふかも 待つとせば深草少將曼珠沙華 かぜを押す風つぎつぎと秋立ちぬ 平凡をかみしめてをり夏蒲団 湯ざめして護謨(ごむ)の伸びたるもの多し 声明の堂宇に満てり天の川 よもつひらさかころげゆくなり寒卵 端居して字余りのごとをりにけり 八月のラジオにたまる埃かな 人ごゑにこころ展きぬ冬ざくら ジャズ・ライヴ聴き終へ芋洗坂おぼろ うららかや雲に押されて空うごく 紙雛の日向くさきを納めけり 魚信待つ人ぢりぢりと灼くるなり 世に馴れず己に馴れず白地着て 過ぎし日の嵩をたためり秋の蚊帳 先生には選句(一千余句の中から三八九句)、身に余る序文、表紙(先生のエンタイア展に伺い、すっかり虜になり是非どこかにそのニュアンスを使用して頂きたく懇願の末実現させて戴きました)、更にイラストレーションを無理にお願いし快諾を頂き句集に挿入して頂きましたこと、此の上ない悦びです。 「あとがき」の言葉であるが、この本文中に挿入された中原さんの手によるイラストレーションがすごくいいのだ。筆致に勢いがあり、まずそれが目に飛び込んでくる。なんとも贅沢な一冊となった。 冬木の芽吹聴したきことひとつ この句は、担当の愛さんの好きな句。「『吹聴』という言葉が面白いですよね。」と愛さん。 蚕が絲を吐き続けるように、枚数が尽き、年齢が尽きるまで、新しい出会いを求めペンを握りたいと思っています。 とは、「あとがき」のことばである。 今日はお客さまがひとり見えられた。 古平隆(こだいら・たかし)さん。 昨年ふらんす堂より、句集『鳥雲に』を刊行された里川水章さんよりのご紹介である。 山口誓子の評論を読んで、俳句を作ろうと思ったとお話された。 「天狼」に山口誓子が亡くなるまで所属し、その後「鉾」で俳句を続けられたという。 里川水章さんとは40数年来の句友であるとも……。 「里川さんから貰った句集『鳥雲に』を見て、ふらんす堂に句集をお願いしようと思いました」とは嬉しい言葉である。 大学の先生であるようだが、何のご専門か聞くのを忘れてしまった。 「これから仙川駅で里川さんと待ち合わせをしているんです」と帰って行かれたのだった。 「上品で知的なおじさまがお二人仙川駅で待ち合わせなんて、なんだか可愛らしいですね。」とは愛さんのことばである。
by fragie777
| 2012-02-01 19:55
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