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1月9日(月) 成人の日
昨日のあたたかな日差しが甦ってくる。 午前中は二匹の猫たちとベッドの上でゴロゴロしながら新書を読む。 あたたかな日差しがまったりと気持がいい。 途中どっちがわたしのそばに来るかで猫たちのバトルが展開されたが、それは日常茶飯のことなので、二匹を「仲良くしなさい」と軽くいさめて、本を読みつづける。 午後からは仕事場へ。 すると和兎さんがいて、装丁の仕事をしている。 耳にイヤホンを突っ込んで、音楽を聴いているらしい。 わたしに向かって、 「自分はいないものと思って欲しい」と言うので、了解の意向を示す。 (要するに集中したいので話しかけるなってこと) わたしは、PDFとなった原稿データをテキストデータの落とす作業をくりかえす。 かなり膨大な量のものであるが、原稿がおもしろくついつい読んでしまうので、余計に時間がかかる。 100篇のうち67篇までやって力がつきた。 途中和兎さんは、用があって退出。 その用とはどうやら髪を刈ってきたらしい。 戻ってくるや、 「眠っているうちに髪形をソフトボール部の女子のような髪形にされた」 とぼやいている。 担当した美容師さんは自信満々の仕上がりだったとか……。 (わたしはコメントを避ける……) 新刊を紹介したい。 中村日出子句集『雛の家』。 最近ではとんと少なくなった函入りの上製本である。 ご本人があまり派手でないようにということから、肌色を基調として君嶋真理子さんが品よく梅の花をあしらってどことなく典雅なおもむきに仕上げてくれた。派手でなくてもやはり女性の句集はどこかに華がなくてはいけない。ご本人の中村日出子さんはとても満足してくださった。 著者の中村さんは、俳誌「知音」の同人で、還暦をすぎてはじめられた俳句がすでに20年になりこの度句集を上梓された。西村和子さんが帯文、行方克巳さんが序文と「知音」の代表がそれぞれ言葉を寄せている。 俳句との出会いによって、日出子さんの豊かな人生経験や興味や文学意識が、一挙に花開き結晶した。彼女の季題発想は自在に時空を超越する。俳句はつくづく体験がものを言う文芸であることを思わせる、滋味あふれる作品集。西村和子 帯文を紹介した。 この句集名は「雛の家」。集中やはり「雛」の句が多い。ご主人が早く他界され女性が中心となった暮らしであったことも由縁かもしれない。 箱書の母の字古りぬ雛納 武骨なる父の好みし雛かな 顔の痛手ゆゆしく享保雛 雛飾りつつ父のこと母のこと いくつか紹介させていただいた。西村さんが帯文で「彼女の季題発想は自在に時空を超越する」と書かれているように、この句集において思い出はあたらしい現実であるかのように詠まれている。それを行方克巳さんは序文において、「単に過去の思い出として把えるのではなく、その日その時の自分との関わりにおいてリアルタイムに述べているという事実は特筆しておかなければならないだろう。」と語っている。 手をとりて母を連れ出す花見かな 柚子湯して仏のごとき母洗ふ 蛍狩母の袂を握りづめ 熱燗や父の銚釐の持ち重り 思ひきや夫なき家の虫の夜 シューベルト歌うて夫の初湯かな 蝌蚪生れて近づく吾子の誕生日 カムパネラ弾きてその名の薔薇もらひ もっと早く俳句をやっていればよかった、とはよく聞くことである。しかし、日出子さんの場合、その時間差は十二分に取り戻している。季題の持つ力が、それを可能にしているのであり、人とは異なったスタイルで過去の世界と係わることで、俳句という表現手段を持たなかった時間を〈いま〉として活かしているのだから。 行方克巳さんの序文の一部を引用した。 こまごまと枇杷の花散り昨夜の雨 雪雫日向の泥を穿ちけり 蚊の声のまつすぐに来る湯殿かな 夕顔の咲いて飯炊く匂ひかな 撓むこと知らぬ紫菀の傾ぎけり 湯豆腐や女二人の差し向ひ 機銃掃射受けしは我や油照り (アメリカ艦載機空襲 昭和二十年) 老いぬれば肯ふ恋の歌かるた 忘れもしません、朝日カルチャーの、清崎敏郎俳句教室に入門した最初の日、先生は「対象物を愛しなさい」とおっしゃいました。初心者には何のことか分らず、ぽかんとしてしまいましたが、今になって、そのお言葉が身に沁みて参ります。その後、「知音」の一員として、お二人の個性豊かな良き師に恵まれ、親切なお仲間のお世話になりながら、俳句を楽しませて頂いて参りました。俳句に夢中になっている中に二十年が過ぎ去り、気が付けば、己の持ち時間も少なくなって来ております今ここに、拙いながら一冊の句集を残せることに、幸せを感じて居ります。 「あとがき」から引用。還暦を過ぎてから俳句をはじめられた中村日出子さんであるが、20年の歳月を集中して俳句を作りつづけて来られた。第一句集を刊行されますますのご健吟をお祈り申し上げたい。 湯ざめしてしやきしやき洗ふ明日の米 お元気な姿が彷彿としてくる一句である。 明日からはいよいよ忙しい仕事の日々となることだろう。 和兎さんは、まだ装丁の仕事をつづけている。 (ソフトボール部の選手のような髪形ねえ……フフフフフッ……) わたしはもうこれで帰ろうっと。 あっ、そうそう、 今日の小島ゆかりさんの「短歌日記」の短歌、まるでわたしのことのよう……。
by fragie777
| 2012-01-09 18:54
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