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12月7日(水)
この花が咲き始めるといよいよ冬が深まりゆくことを実感する。 昨日はちょっと夜ふかしをしたせいか、夕方になって眠くなった……。 ブログを書こうとWindowsを立ち上げて、ページをひらき打ちこみはじめる前にわたしは大あくびをした。 さてと…… あっ、また大あくびだ……。 今日は一日中探し物をしていたから疲れてしまった。 わたしの机はとても不思議…。 さっきあったものがもう失くなる。 いま、さっきまであったのよ。それがないわけ……。 「どうしてないの?!」ってわたしはぶつぶつ言ってオロオロと探し始める。 そういうことが今日は三回繰り返された。 スタッフたちは(あーあ、いつものことか……)とあきれ顔である。 「絶対不思議よお、なんでないの?」って泣きべそ状態で探し続けていると、Pさんが、 「ちゃんと捜しました?!」って厳しく言う。 「抽斗のなかとかゴミ箱とか……」 「探したわよお、もう何べんも……、わたしの回りにブラックホールがあって、大事なものが消えちゃうのよね」 とかとか言って、探すことを諦め、半分忘れたころに、 「あった!!!」と出てくるのだ。 それがさっき何べんも探したところからだったり、ふっと机の上に湧き出ていたりするから、わたしは狐にだまされたような気分である。 「やっぱりブラックホールがあるのよ!この辺り」って言うと、 「ブラックホールはyamaokaさん、あなたです!」とPさんは鋭く言い放ったのだった。 他のスタッフはここぞとばかり大笑い。 フン、笑うがいいさ。 結局ない!って大騒ぎしたものは全部現れた。 そうわたしをあざ笑うかのように現れた、っていうのが一番的確な表現だ。 スタッフみんなの陰謀じゃないかってだんだん疑心暗鬼になっていく…… っていうのは冗談だけど……。 新刊詩集を紹介したい。 小笠原眞詩集『初めての扁桃腺摘出手術』である。 前詩集『極楽とんぼのバラード』に次ぐ第五詩集となる。第二詩集『あいうえお氏ノ徘徊』(第24回青森県詩人連盟賞受賞)、第三詩集『四十八歳のソネット』とふらんす堂で刊行されている。 長いおつきあいの方なのだが、今回詩集を拝見してわたしは著者の小笠原さんがお医者さまであることを知った。いままでの詩集では気づかなかったのだが、なんとなく弁護士さんじゃないかって思っていたのだ。根拠を問われるとこれがよく分からない。だいたい詩人さんがどんな職業かというのは、詩を読むにあたっては関係ないはずだ。しかし、小笠原さんは比較的家族のことやご自身のことを詩の題材にされるので、いまだお目にかかったことはないが、なんとなくよく存じ上げているような気がしていたまでだ。 これまでの詩の作品の多くはシリアスなテーマも軽快なユーモアにくるんで表現し、そこに言葉遊びを織り込めるといったものが多かったように思う。テーマを決め、ある決まった形式で書くというスタイルをとっておられたが、今回のものはちょっと違う。 今までの三冊の定型詩集とは大きく異なり、制作年度もほぼ四半世紀の開きがあり、作風もアバンギャルドありシュールあり、定型詩あり折句あり、ソネットありバラッドあり、家族ものあり医学ものあり、フィクションありリアリズムありと、正にごった煮の闇鍋状態。時の隔たりはあるものの、よくもまあ同じ人間の口からこれだけ違ったものが吐き出されたものだと、我ながら呆れてしまう始末。 と「あとがき」にあるように内容は多彩である。その詩集を編んでみて小笠原さんは、「人間は実に複雑な生き物だとつくづく思った次第です。」と「あとがき」に続けている。 詩を書き始めて三十五年、よくもまあ飽きもせずこれだけの期間続けてこれたものです。糧を得る仕事と違って、ぼくにとって詩とは、真剣な遊びなのであります。 その「真剣な遊び」の作品を紹介したい。 身体髪膚 私の家族は妻と息子二人の三人である この三人に私は職業柄とは言え メスを用いたことがある 長男には急性中耳炎で鼓膜切開術を 次男には上唇小帯短縮症で離断術を 愛妻には慢性扁桃腺炎で扁桃腺摘出術を 施行した訳である 息子たちの手術は妻も耳鼻科医なのだから 彼女がおこなってもよさそうな気もするが そこはお互い本能的に回避したがり 結局激しい口論に打ち破れて 私がおこなうことになってしまったのだ 身体髪膚 これを父母に受く あえて毀傷せざるは孝の始め也 とよく言われるが 親自らが手術を決行した訳だから 彼らが親不孝になっても文句は言えない 妻の扁桃腺摘出術は息子たちの手術より 少しは大手術なのに 不思議と心が落ち着いていた 妻は扁桃腺摘出術の症例が私の三倍以上はあり 確かにこの手術に関しては私より上手だと思う その妻に手術中「うまいわね」と言われ 心温まるものを感じてしまった 逆説的に言えば妻は他人であり 息子達は自分の分身であることに 初めて気づいたのである 愛情とは別の 血のつながりの 空恐ろしさを実感した事件であった この詩集の担当は、11月で辞めたスタッフの優明美さん。 (優明美さん、どうしてるかなあ……頑張ってるかな……あっ、今朝電話で話したばかりだった……)。 優明美さんのおすすめの詩は、「自転車の祖父」というタイトルの詩。 思い出のなかの「祖父」のことだ。 小笠原眞さんは、青森の十和田市生まれで十和田在住である。 十和田市で医業に従事するかたわら、地元の詩人たちと活発に交わり詩を書きつづけてきた方だ。 この度の詩集の装丁は前の三冊同様、君嶋真理子さん。 なかなか衝撃的な装丁である。「扁桃腺」がいやがおうにも目に飛び込んでくる。 かつて一度だけ言ったことのある十和田市。十和田湖のほとりに宿をとり、田沢湖をモーターボートで一周した。日本一の深さを誇る田沢湖。エメラルドグリーンの美しい湖。 とそこまでは良かった…… しかし、その後はわたしには恐怖の思い出しかない。 モーターボートがこんなにも恐ろしいものだったとは……。 田沢湖の波は荒く、ひっくりかえりそうなりながら超スピートで走るモーターボート。 わたしの絶叫が田沢湖にとどろきわたった。 生きて帰れないと思った…… ふらふらになって地面に足をついたとき、回りの視線がなぜか冷たかった…… しかし、かまやしない。 わたしはバクバクしている心臓を落ち着かせることに必死だったのだ。
by fragie777
| 2011-12-07 19:40
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