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11月21日(月)
今日は夕方からお客さまが二人見えるのではやくブログを書いてしまおう。 ところであのレイの紫色になった鶏肉は、その後結局わたしの口には入らずいつのまにか無くなっていた。 そうよ、見た目は紫色でも味はいいんだからさ…… 食べないなんてバチが当たるよ。 わたしは全然食べる気がしなかったけど。 新刊句集を紹介したい。 吉川梅子句集『城山』(しろやま)。前句集『錦川』(にしきかわ)に次ぐ第二句集となる。 俳誌「狩」同人。主宰の鷹羽狩行氏が帯文を寄せている。 著者の吉川梅子(きっかわうめこ)さんは、実はご城主の奥方さまである。 亡くなられたご主人は、山口県岩国の800年つづく岩国藩主吉川家の城主であった。岩国城は山の上にあり、句集名の「城山」とはこの城をさすのではないだろうか……。 前句集の集名「錦川」は、日本三奇橋のひとつである錦帯橋のかかる錦川のことを言い、この橋から城の天守閣はよく見える。 著者の吉川さんは東京都区内のお住まいであるが、岩国には「吉川資料館(きっかわしりょうかん)」があって伝来の歴史資料や美術工芸品が収められている。この度の句集『城山』も著者のご意向でこの資料館へもお送りしたのだった。 前の句集同様今回の句集も君嶋真理子さんの装丁によって品格と趣のある美しい出来上がりとなった。紫がお好きであるという吉川梅子さんのためにもちいた紫色はどこまでも典雅で日本古来の伝統文様がそれなりの風格をそえている。前句集どうよう、著者の吉川さんは喜び満足してくださった。 家元の門より二人夏羽織 夏でも羽織袴というから、格式を尊ぶ宗家だろう。「二人」にドラマがある。 邂逅や肩すべらせて春ショール 久しぶりの出会い、ショールを「すべらせて」という仕草に親しい間柄が想像される。 神官の袖ひるがへし青嵐 強風をものともせずに神事が進んでゆく。神官の白衣にある神々しさと涼しさ。 第一句の格式、第二句の華麗、第三句の厳粛など、硬軟自在の作風が本句集の魅力である。 鷹羽狩行氏の帯文より引用した。ここにある「格式」「華麗」「厳粛」ということばが象徴するような世界を生きてこられた著者の吉川梅子さんである。 松飾るいつものとびの来ずなりぬ 騎馬武者のくぐりし門を花吹雪 二の丸の一隅にして水芭蕉 門前に降りこぼしてや松手入 料峭や錦帯橋を急ぎ足 城山のからくり時計西日さす 父祖眠る城山照らし盆の月 傘寿など人ごとのやう冬苺 百年を経て盆梅の花あまた 城山の裾染め分けて紅葉谷 なにか別の世界に住む人の生活を覗くようにして句集を読んでみた。時間がタイムスリップしたかのような映像が目に浮かんでくる。せせこましい私たちの生活風景とはちがった景がある。 きっとわたしたちとは違った時間が流れているのだろう。 『城山』は、第一句集『錦川』に続く私の第二句集です。平成十八年から同二十三年までの二七六句を収めました。 本句集を出す年に東日本大震災が起こりました。一瞬のうちに肉親を失った人、両親を津波にのまれた子供達、数百人に及ぶ孤児達のことを思うと胸がはりさける思いです。何か出来ることはないか、老人であるわが身を今ほど情なく思ったことはありません。一日も早くもとの生活にもどることが出来ますようにと祈るばかりです。 「あとがき」のことばである。ご自身のことはほとんど語らず震災で被害を受けた人たちへの思いに溢れた「あとがき」である。豊かな生活にただ自足しておられる方だけではない。 読みつげば時に雨音秋灯 仕来りの廃れゆく世の若水汲み 疎開てふことありし日よ初浅間 かなかなやそろそろ子らの帰る頃 ひと雨にくれなゐ加へ曼珠沙華 傘さすもささぬも銀座春しぐれ 子を呼ぶに祭団扇で招きけり この句集の担当は愛さん。愛さんが好きな句は、 子の髪にさしてつらつら椿かな 可愛らしい女の子が浮かびあがるが、この女の子もまた市松人形のような女の子に思えてくる。 わたしがやっぱり豊かな伝統を感じたのは次の一句。 笛太鼓欠けてめでたき雛飾 お家伝来の立派な雛段飾りのいつくかのグッズが長い年月のはてに失われてしまった。「欠けてめでたき」と言える御家柄のよろしさがカッコいい……。 と、ここまで書いてご来客である。 俳人の横澤放川さんと北島大果さんである。 横澤放川さんは、中村草田男精選句集『炎熱』の編者としてご尽力をいただいた方だ。 北島大果さんは、第三句集『大川』を昨年刊行されている。 これからちょっと三人で近くの飲み屋さんまで行ってきます。 中村草田男精選句集『炎熱』が刊行したあかつきには祝杯をあげましょう、ということになっていたのだ。 で、 祝杯をあげてきま~す。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ いま戻りました。 わたしはこのブログが気になったのでワイン一杯にとどめました。 いろんなことを話したなあ…… 面白かった。 お二人とも草田男に師事するだけあって、結局は草田男へのオマージュに終始した、ということになる。 まるでまだ草田男が生きているかのように、尊敬をこめたいとおしさで語るのだ。 聞いていてこっちまでわくわくしてくる。 「いい句は読めばわかる。選句をしていると一所懸命作っているということがこちらにも伝わってくる句がある。その懸命さが伝わってくる句がいいのだ」 と草田男は先輩俳人に批判された北島さんを励ましたという。 もっともっといいお話を伺ったのであるが、もうすぐ夜中の12時である。 わたしったらまだ仕事場にいる。 もう帰らなくては…… じゃ。
by fragie777
| 2011-11-21 23:50
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