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9月12日(月) 仲秋の名月
仲秋の名月を写真に撮ろうと仙川商店街に飛び出したところへ、野良猫のきいちゃんがやって来た。 ごはんを食べにときどき顔を見せるのだ。 今日はふらんす堂の中に入って玄関のところで大好きなPさんを待っていた。 さて、 お月さまは見えず、結局写真に撮ることが出来なかった。 雲っていて暗くそして遠かったので写真では見えないのだが、何人かの海女さんが潜っていたのだ。朝はやくオートバイで乗り付けて海女の径となっている海への断崖を降りていきそこから泳いで潜るらしい。 わたしもその海女の径を途中まで降りていったのだが、ものすごい急な斜面で途中でへばってしまった。そこから肉眼でやっと海女さんたちの仕事の様子が見えたという按配。 崖の上から別の海女さん(ほぼみな老女である)がその仕事ぶりを見ながら、もう一人の海女さんに話しかけている。友人が聞き耳をたてたところ、どうやら今日は海の底の潮の流れが激しくて仕事にならないということらしい。これだけ聞き取るにもやっとというくらい、実はことばの癖が強く意味がわかりにくいのだった。 中には大きなドラム缶がありそこに火が焚かれている。 海で冷え切った身体をここであたためるためだ。 煙突からは火事にもなりそうな勢いで煙が出ていた。 中が見たかったが鍵がかかっている。 留守にして火事にならないのだろうか……。 海女小屋をしのぐ高さにまでなっている。 その薪の量が圧倒的だ。海女の生業によって生活している漁村なのだろうか。 わたしは海女さんを実ははじめて見た。ましては海に潜っているところなどテレビぐらいしか見たことがない。現役が老女ばかりというのは、あとを継ぐ若い世代がいないということなのだろう。身体をはった厳しい仕事だ。 海女さんはみな声が大きい。 そして潮涸れというのだろうか、声が涸れている。 迫力あるよ。 わたしはちょっと怖くて近寄れなかったな。 俳人の人たちは、こういう海女さんたちを見て詠んでいたのかと、いまさらながら実感しいっそう興味深く思ったのだった。 「ユリイカ」という雑誌がある。 青土社という版元が刊行している伝統ある雑誌だ。たしか最初は詩の雑誌から出発したのではなかったか。いまはその枠をぐっとひろげて生活文化までにおよぶしなやかな編集をしている。 その「ユリイカ」が「現代俳句」の特集をするという。 最近ふらんす堂から句集『拝復』を刊行した池田澄子さんのインタビューや、高柳克弘さんをはじめとする若い俳人たちも寄稿しているということだ。 「ユリイカ」が「俳句」の特集とは……、結構じゃないの! その「ユリイカ」の編集者の明石陽介さんという方が電話をくださって、広告を出して欲しいという。 ふらんす堂も「ユリイカ」から広告を望まれるとは、ちょっぴり嬉しい。 わたしたちの学生時代の「ユリイカ」はカッコ良かった。 内容、レイアウト、カットの衝撃性、ともかくも前衛的だった。 「シュールレアリスム」の特集などはまず「ユリイカ」だった。 「できるだけサービスします」って小さな版元を気遣って明石さんは言ってくれた。 その額は、……ふらんす堂にとって安い金額ではない。 広告して元がとれるだろうか…… しかし、決めた。広告をお願いしようって。 版下を添付ファイルで明石さんに送るとき、 「敬愛する伊達得夫さんのことを思って、えいっとばかりに太っ腹になりました」 って、メールに書き添えたのだった。 伊達得夫(だて・とくお)とは、書肆「ユリイカ」をつくった創立者であり、戦後の詩人の多くを世に送った名編集者だった人だ。 40歳で夭折している。 彼が書き遺した『詩人たち』というエッセイは面白い。編集者と詩人がひとつとなって戦後の日本に新しい詩を送りだそうとする志に充ちている。 詩人たちも編集者も貧しい。しかし、どこか呑気で豊かだった。そんな本づくりの日常がユーモラスに淡々とつづられたものだ。 わたしは広告を明石さんに送ったあと、わたしの右うしろの方を向いて、飾ってある伊達さんの写真に向かってこう言ったのだった。 「損はしたくありませんからね!」 伊達さんはニコニコと笑っているばかり……。 明日は新刊を一冊紹介したい。
by fragie777
| 2011-09-12 20:05
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Comments(2)
yamaokaさん、お元気そうですね。オンラインショップを覗いたら私の句集が売り切れになっていて、ほっとしました。何か気になっておりましたので、小さな責任を果たしたような。。。
この度「樹氷」の主宰となりましたのでご報告します。 また角川新年会ででもお会いできることを楽しみにしております。 PS とんこも元気です。
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fragie777 at 2011-09-13 10:24
一羊さま。
お久しぶりです。 そうだったんですか! ご自身の句集の売れ行きというのは、気になるものなんですね。 お気にかけていただき有り難うございます。 主宰者となられたんですかあ…… きっとお弟子さんたちに愛される主宰者になられるでしょうねえ。 お忙しくなることと思いますが、頑張ってくださいませ。 とんこさまによろしくお伝えくださいませ。 (yamaoka)
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