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8月8日(月) 立秋
もうここに何回来ただろうか…。ひとつひとつ木に触れて行く。木は季節によって冷たかったり暖かかったりしていつも気持がいい。 雑木林にはさまざまな木が植えられている。 当り前か……。 だから雑木林と言うのか…。 「次は樫の木になりたい」 そう、川崎展宏さんは生前言っていたと言う。 金子兜太さんが書かれた追悼文で知った。 樫の木か……。 わたしは生れかわるとしたらどんな木になりたいだろう……。 本気で考えてみるか……。 新刊句集を紹介したい。 西部通子句集『ひたすらに』。古稀を自祝しての第一句集である。 西部通子さんは、俳誌「知音」(行方克巳・西村和子代表)の同人であり、関西の西宮市にお住まいの方だ。句集を読んでいくと関西人らしいやわらかな言葉づかいの作品がときどき顔を出す。帯文を行方克巳さん、序文を西村和子さんが寄せておられる。 句集名の「ひたすらに」は、行方さんがつけたものである。 西部通子さんは何事に対しても一途に立ち向かう。その作品は彼女の真摯な人となりそのものである。まさにひたすらに俳句という文芸に臨んでいるのである。 「人となり」そのものであるタイトルなのだ。 本の装丁の相談でご来社されたとき、表紙のクロスにきりりとした紺を選ばれた。この紺はまさに西部さんの「ひたすら」なる心の有りように合っている。 手袋の毛玉愛しみ待合はす 猫の子のみんなふるへてみんな三毛 許すとは根尽くること明易し 秘めごとの生涯ひとつ曼珠紗華 名月や地上のものの力抜き きちきちが私へ飛んで誕生日 雛の目のすこし狂うておはせるや 男らは己に甘し心太 うすれゆくペン胼胝さすり秋深し リッツカールトンホテル丸ごとクリスマス それらしき名で呼べばくる春の猫 極月のぴしやりと閉ざし冷泉家 序文を寄せた西村さんは、この句集にはテーマが三つあると書く。一つ目は孫への思い、二つ目は母への思い、もうひとつは自身への思いであると。 ひとりで生きる自分を詠む。これがこの句集の底に流れている最後のテーマだ。その思いは同時代を生きる私たちの多くが、一度は向き合うテーマでもある。 花人となりて一人と思ひけり 凶と出てよりの決意や初詣 星飛んで晩年きつとおもしろし 梅ふふむ我にちひさき志 行く春の我もほろりと老ゆるかな これらの作品はわたしも好きな句である。とくに「ほろりと老ゆる」なんていいなあ……と思う。じゃ具体的にどういうのが「ほろりと老ゆる」ことであるかというと、これはまた難しいが、「老い」ということにあまり抵抗しないのがいいのかもしれない。やわらかな気持になって「老いに従う」ということか……。 で、担当の優明美さんに好きな一句を聞いてみたところ、 ポケットに残りし切符春の果て 言葉はやさしく、思いは深く、を心にこの先もずっと俳句を楽しんでゆきたいと思っています。 「あとがき」の言葉である。 母思ふは我思ふこと遠花火 この句にふっと立ち止まった。 すでに母亡きわたしは、「ああ、そうかもしれない…」と思ったのだった。
by fragie777
| 2011-08-08 19:25
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