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5月23日(月)
新しい仕事場のトイレの外壁がいよいよ黄色に塗られた。 わたしたちが思いを籠めた黄色である。 称して「ひよこトイレ」。 「ひよこ」のようなあったかくて明るい色である。 「yamaokaさん! これでももう『ひよこトイレ』って俳壇で話題沸騰ですよ!」って愛さんが嬉しそうに言う。 「アハハハハ……。俳壇のほんの一部で話題になるかもね」とわたしも笑う。 そう、ひよこトイレはあなたを待っています。 あたらしい仕事場の「ひよこトイレ」を是非見に来てください。 「トイレットペーパーを使うごとにピヨピヨって鳴くっていうのはどうですか」って今度は優明美さんが嬉しそうに言う。 「そ、それはちょっとうるさいかもね」とわたし。 でもわたしたちの「ひよこトイレ」へのワクワクする思いが伝わってきません? 新刊詩集を紹介したい。 青木津奈江詩集『星降る岸辺の叙景』。つつましい美しさをもった本となった。このつつましさはどこか著者の青木津奈江さんのたたずまいと響きあう。 詩集の最終ぺーじに小さな活字でこう書かれている。 ……三月十一日の出来事を前に、このまま詩集を出してよいのか悩みました。しかし、生かされているわたしという思いに到った時、生きられなかった人たちへの追悼の意味をこめて、この詩集を出版することにしました。 そんな著者の思いを経て刊行された一冊である。 めぐる あじさい公園の 坂を下りて あなたに会いに 夏みかんの木の 塀を過ぎて あなたに会いに オニヤブソテツの 石垣を越えて あなたに会いに 森戸神社の参道の 茅の輪をくぐれば そこは海 菜島の鳥居 鳶は鳴き わたしはひとり呼んでみる かくれ岩から 吹く風が 髪をゆらして 頰をうつ 潮が満ちてくるように 迫りくる 夏にこの胸 あふれそう 好きな詩をひとつ紹介してみた。 やさしいやわらかな言葉に導かれて「あじさい公園」も「夏みかんの木」も「オニヤブソテツの石垣」もどこかなつかしい。 夏のまぶしい光をぬけると海、わたしは、かつてのわたしに、そしてこれからのわたしに出合う。 声に出して読めば、いつしかそれはわたしを呼ぶ声と重なっていく。 死んでいった人と生きてゆく人をつなぐ厳しくて、いじわるで、暖かい道すじ。私がいま、その道で鐘を鳴らすと、また新しい明日がやってきます。 「あとがき」の言葉である。 著者は時間のなかに佇んでいる。 そして、そこは「星降る岸辺」だ、きっと、そう。 この本の装丁は稲川方人さん。 用紙をどれにしようか迷われていたので「わたがみ」をおすすめしたところさっそくそれを用いられた。出来上がって手にとってみるとその風合いが素晴らしい。ああ、やっぱおすすして良かったと思った。四六判上製薄表紙で、すこし細長い本。 小さな銀の星の箔押しがつつましい光を放っている。 雑誌「出版ニュース」が送られてきた。 『金子兜太×池田澄子 兜太百句を読む。』が紹介されている。書影付きである。やはりこの本目立つと言う意味ではとことん目立つ。 本書は自作の第一作から、「今日までジュゴン明日は虎ふぐの我か」(『日常』)まで百句を選び、縦横に語り合う。金子兜太の真髄が伝わってくる。 記事の一部を紹介してみた。 この一書、「俳句を知らない人でも読める」という反響を貰っている。 俳句の背後にある人間の肉声がきこえる、そんな面白さがあるのかもしれない。
by fragie777
| 2011-05-23 19:37
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