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3月24日(木)
しかし、寒い……。 明日は支払日である。 そう考えるといっそう寒い。 地震や寒さに震えるだけでなく、銀行残高数値にも震えなくてはならない。 この震えは零細企業の経営者特有の震えである。 経験したくても誰でも経験できるものではない。 0の数字に一喜一憂し、なんとかやりくり出来た時の喜び。 あなたにわかります? まっ、敢えて言うなら特権、と言わしてもらうわ……。 と、こんなふうに(今のわたしは結構強気なんだ……) 『金子兜太×池田澄子 兜太百句を読む。』がいま目の前にある。 この見本をもってスタッフのPさんが今日は取次店に行ってきた。 その結果書店さんの店頭にならぶのは多分4月頭になる。 「停電になるとさあ、何にもすることなくて困っちゃう。」 今回そんな声をよく耳にする。 「ホント何にもできないよね」 「でも本は読めるよ…」 「昼間は日の光で、夜だったら蝋燭の灯りで……」 昨日そんな会話をしたばかりだった。 そんな時に読むのにふさわしいのがこの『金子兜太×池田澄子 兜太百句を読む。』である。 まず本が軽い。しかし文字は大きいので読みやすい。 対談と言うかたちで俳句を鑑賞していくので、無理なく言葉が入ってくる。 池田澄子さんのするどい突っ込みに兜太さんがちょっとたじろいだりするのも面白い。 ともかくもお二人の丁々発止のやりとりにこの対談の魅力がある。 華麗な墓原女陰あらわに村眠り 池田 私これは、寒くなるっていうか、震えが来るほど好きです。 金子 やっぱり貴女、感覚がおもしろいなあ。 池田 好きですねえ……。この「淫ら」、うん、「淫ら」が。何て言ったらいいんですか。「淫らであることの生々しさ。それで、人が生きてるんだっていう感じ。墓だけが華麗なんですねえ。貧しさの伴なう哀しい見栄、でしょうか。 金子 そうそう、まさにそのとおりです。 池田 これはもう本当に凄い句ですねえ。貧しさがこの「淫ら」を生き生きさせてるんでしょう?これしか生きがいがないみたいなね、そこまで言うと言いすぎですけど。一句は、何も言っていないから説得力が増します。 金子 そうです。そのとおりです。性欲だけで生きてるんだ。それはもうぴったり。野母半島に行ったときです。漁村がね、イワシ漁が駄目になってね。本当に貧しい状態だったんですよ。性欲だけで生きてるって感じが本当にあったんです。貴女のおっしゃるとおりです。 池田 汚れた布団とかね、感じられるんですよ。 金子 まったくそう。現実にそうだった。 池田 ですよね、きっとね。昔だから掛け布団に白いカバーなんか掛かってなくて、布団の襟のところに黒い別珍が縫い付けてあって、それがテラテラになっていてね。そんな布団まで、なんとなく見えてくる。 この対談集、もちろん金子兜太の代表句といわれるものも多く選ばれているが、池田澄子であるからこそ選ぶ句があり、そこに池田澄子の鑑賞の目が光る、それが面白いのだ。 作品というものは作家よりいづるものであるが、それはもはや作家のものではない、自由に取りざたされてもいいものなのである、その作家を目の前にしてさえ……。 この対談集を読みすすんで行くと作家を目の前にしてさえ自身の鑑賞にひたむきであろうとする池田澄子という俳人の姿が発ち顕れて来る、それが魅力的だ。あるいはその作品が多くの鑑賞者によって詠まれてきた物語を作者によって知らしめられる面白さがある。草田男が耕衣がどんな兜太俳句を好きだったか……、そんなことを兜太さんから聞くのもまたおもしろい。 丁々発止にフランクにしかしお互い表現者としての矜持をもち、張りつめた思いのなかで作品を前にして向き合っている、そういう気迫さえ感じるのだ。
by fragie777
| 2011-03-24 18:54
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