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3月22日(火)
寒い春の朝となった。 おまけに雨が降っている。 わたしは二日酔いもなく目覚め、つめたい床を素足のまま歩き出す。 しばらく動き回っていると身体に螺子がまかれてくる、なかなかいい感じだ。 そうやってやがて仕事をする体勢が整ってくるというわけだ。 燃えるゴミも誰からもうしろ指をさされないよう規定どおりに出して、申し分のないわたしになりつつある。 いざ、仕事場へ……。 と、ここまで書いてきてまた地震だ。 スタッフたちが帰るところで玄関にかたまっている。わたしもコワイので例のごとく鞄をつかんで玄関にむかう。 心臓がバクバクする。 どうやらおさまった……。 おっ、頭の左上の方で何か揺れてる、と思ったら時計の振子だった。 笑いごとじゃないね。 こんな感じで身体が揺れているものにすべて反応してくる。 新刊句集を紹介したい。 現代俳句文庫『武藤紀子句集』である。ひさしぶりの現代俳句文庫の刊行となる。 武藤紀子さんは、俳誌「晨」と「古志」の同人である。宇佐美魚目に師事し、長谷川櫂に兄事す、と略歴にある。そしてまもなく俳句結社誌「円座」を創刊し主宰となる。 この『武藤紀子句集』の「あとがき」に 還暦をすぎてからの遅い出発ですが、私にとってはその時期が来たということなのでしょう。人生の次の目標ができました。 とある。この句集の刊行があたらしい出発の第1歩となったのではないでしょうか。 句集には既刊句集『円座』『朱夏』『百千鳥』より精選した約400句が収録されている。 うしろから冬が来てゐる大伽藍 踏青や疾走しくる君は何歳(いくつ) たつた今蛤置きしところ濡れ 文字摺草声遠くなり近くなり 緑陰ににはとりの首浮びけり 七夕や水に映りて人通る 馬の首松虫草に下りて来る こらへをる大きな顔のばつたかな 金屏にものの影ある寒さかな 木と紙の家に住みけり明易し 男は低く女は高く踊かな フランスの国のかたちの枯葉かな 笑ふ山裾桃色のラブホテル 花冷えや急所の多き人体図 「エッセイ」として収録されているものは三篇あり、「存問と美ー宇佐美魚目句集『松下童子』」「吉野葛ー飴山實句集『花浴び』を読む」「中将の系譜ー川崎展宏句集『秋』を読んで」の各書評である。「解説」として、宇佐美魚目「『円座』序」と長谷川櫂「俳句的生活」の一文がそれぞれ収録されている。長谷川櫂さんの文章の一部を紹介すると、 この人は前々から恰幅のいい句を詠む人で、花は桜、魚は明石の桜鯛ではないが、桜や松、鯛や鶴などという大きな題材を詠ませると素質と響き合うとでもいうのか、玉のような句を吐く。 として作品を紹介している。 空海の水晶の数珠山桜 住吉の松の下(もと)こそ涼しけれ 東大寺鹿の来てゐる春田かな 鯛落ちて美しかりし島の松 この句集の担当は愛さん。おすすめの一句はと聞くと次の句を書いて渡してくれた。 雪の日のとり戻したき文ひとつ 句集の後ろの方に追悼句がふたつ置かれている。どちらもわたしにとって思いのある方へのものだ。 青き馬たづさへて年歩み去る (悼 田中裕明) 霜枯に中将の面はづしけり (悼 川崎展宏) 掉尾に置かれた一句におどろいた。これは帯にも書かれているものだ。 ことばが躍動している。 完璧な椿生きてゐてよかつた 実は前書きがあったのだ。 しかしこの前書きはあえて紹介しないでおきたい、と思う。 今日のねんてんの今日の一句は、やはりこの現代俳句文庫『武藤紀子句集』より。 草餅で人を呼ぶなり門前屋 「門前屋」という言葉がおもしろい。門前町に並ぶ土産物屋などを指すのだろう。「草餅、うまいよ」などと参詣の人を呼び込んでいるのだ。 おいしそうな草餅だろうな、きっと……。 美味い緑茶を飲みながらゆっくりと草餅を食べる…… そんな長閑な日を待ちのぞみつつある今日の日々だ。 草餅よ、 長閑な日々よ、 来たれ!
by fragie777
| 2011-03-22 19:38
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