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2月23日(水)
![]() それは夢のつづきだったのかさだかではないのだが、ドミニク・サンダに呼び起こされるように今日の私は目覚め、しばらくベッドの上でそのフランスの女優のことを考えていた。ベルナルド・ベルドリッチ監督の「暗殺の森」のドミニク・サンダは最高だった。ポケットに手を突っ込んで、咥え煙草の反抗的な眼差しをした少年のように登場し、ヨーロッパの暗い官能をたっぷりと漂わせた冷たく妖しい人妻を演じたこの女優はこの時18歳だったという。その若い肉体はすでに退廃と堕落の悦楽を味わいつくしているかのようだった。 しかし、 なんでドミニク・サンダ? わけが分からん…… わたしはぼおっとしながらも(ウン、やっぱカッコいいよな…)と、しばしうっとりと彼女のことを考え、それからそろそろとベッドから這い出し、日常の時間を取り戻すべく冷たい床に足をおろしたのだった。 さてと、新刊句集を紹介したい。 坂田自然句集『膳所』(である。 さてこの「膳所」は何と読むのでしょうか? 知っている人は知っている(当たり前か)が、これがなかなか難しい。 「膳所」と書いて「ぜぜ」と読み、実は地名である。滋賀県の大津市のなかにある地名なのだ。「ぜぜ」と読むことを知ってしまうと風情のあるなかなかいい言葉の響きだ。著者の坂田自然さんはこの膳所に生れ育ち今日までの多くの年月をここで過されたという。この句集には著者による「まえがき」と「あとがき」があり、その「まえがき」で膳所を紹介している。 膳所の地名の由来は六六七年天智天皇が大津に都を移された時に遡る。膳所の地が御厨に指定され陪膳浜(おもののはま)と呼ばれた。膳所が使われはじめた時期ははっきりしないが、大平記一三三六年ごろの記述にぜぜが瀬としてぜぜの地名が出ている。 膳所は本多六万石の城下町で昭和三十年代まではその風情をとどめていた。お城の堀も残っていたし土塀造りの家、白壁の蔵、多くの家には柿の木がありあちこちに竹藪があった 由緒ある古い城下町なのだ。しかし、「まえがき」によると「建て替えや開発が進み、今やその面影はほとんどなくなった」ということだ。坂田さんはこの「膳所」にたいへん愛着がおありのようで句集のなかにこの膳所を詠んだ句を沢山収録されている。そのいくつかを紹介したい。 冬の雨膳所に一間川魚屋 星月夜膳所の随所に暗き辻 葛饅頭膳所に変らぬ一区画 花散つて膳所硬質の町となる この他にも詠まれているが、ここには春夏秋冬の膳所がある。 坂田自然さんの俳句歴は長く、昭和28年ごろに公民館の俳句講座で俳句に触れ、途中30年間は俳句から少し離れふたたび俳句に向き合い80歳になったのを記念として今回の句集の刊行を思い立ったとのことだ。 紙を漉く水縦に責め横に責め 地団太を踏んで春泥落としけり 如月の垂直に置く管楽器 押売りが来て懐手解きにけり 抱きやうもなきふにやふにやの昼寝の子 春の虹人の死はみなあつけなし ビラにビラ重ねて貼りて十二月 寒鯉の水を汚さず動きけり 落し文男が拾ひ捨てにけり 寒明けの下駄箱妻が覗きをり 先生が先生と呼ぶ四月馬鹿 俳句をやっていて良かったと思う事が幾つかある。俳句を通してまた作るために多くの言葉を知り得たことである。恐らく俳句をやらなければこうも頻繁に辞書を引くことはなかったし、多くの言葉や文字に触れなかったであろう。辞書を引き少し掘り下げてしらべることで多くの言葉を正しく学んだ。 二つ目は俳句を始めてより深く四季の移り替わりや暦に関心を持つようになり、年々行われている仕来りや行事に敏感になった。季節の変化の多いこの国で四季と向き合い観察することにより、自然との関わりが強くなったことを有難いと思っている。 「あとがき」のことばである。 この句集の担当は優明実さん。この度もわたしは尋ねてみた。「どの句が一番好き?」と。「好きな句はいろいろとありましたが、」と言いながら優明美さんが選んだのは次の一句である。 父の背を洗ふごとくに墓洗ふ わたしもこの句は印象的だった。 わたしはどれがいいかしら? いくつか気になった句のうち次の一句にした。 老人が連れ戻さるる夕桜 老人はいったいどこをさ迷っていたのだろう……、連れ戻しに来たのは美しい女のかたちをした実は鬼、その行く先はこの世ならぬどこか……。この句にはシュールな匂いがただよう。 だって夕桜ですもの……。 21日のねんてんの今日の一句は、廣瀬悦哉句集『夏の峰』より。 腕組んで人たつてゐる春の坂 ほかにも「しやぼん玉男が腕を組んでゐる」が紹介されている。この新刊句集についてはまだこれから紹介する予定であるが、栞を書かれた三枝昴之さんが「男俳句の新鮮さ」とそのますらおぶりについて触れている。この二句からもその男っぽさが十分に伝わってくる。 そして22日の「増殖する歳時記」は、土肥あき子さんによって、行方克巳句集『地球ひとつぶ』より。 猫の子のおもちやにされてにやあと鳴く 土肥あき子さんの鑑賞で22日が「猫の日」であることを知った。だから土肥さん、「堂々と猫の句を紹介させていただく」ですって。いいですね。 そっか、昨日は猫の日だったのか……。知らなかった……。わが家の2匹の猫たちに今日は缶詰を買って特別サービスをしてあげよう。 紹介が遅れてしまってこちらも申し訳ないのであるが、去る19日に成田のホテルでふらんす堂より句集『えんとらんす』を刊行された寒郡政雄さんの出版記念会が開かれた。寒郡(かんごり)さんのご友人やご家族が集まって心づくしのお祝いの会をされたのだった。ふらんす堂からは担当の愛さんがお祝にうかがった。 ご家族の近くに座ってあたたかなおもてなしをいただいたようだ。 ![]() 寒郡政雄さま、おめでとうございました。
by fragie777
| 2011-02-23 19:13
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