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2月15日(火)
春の雪はあっさりと溶けてしまった。 あの白はどこへ移動したのだろうか……。 ブログを書き始めたのだが、いま横でスタッフのPさんがいろいろと話しかけるのでなかなかブログに集中できない。これからの企画のことなど話し始めるのでついつい気持がそっちに行ってしまう。こういう話をしだすとキリがなくどんどんテンションが高くなり、夢は無限大の極致へといってしまう。夢のふくらむ春の夕べだ。膨らみすぎて飛んでいってしまいそうだ……。 さあ、集中して新刊句集を紹介しよう。 ちょっとPさん、もう話しかけないで……。そんな大声で笑わないでよ。 新刊句集は、高瀬竟二句集『風樹』である。高瀬竟二さんは、「ホトトギス」「海坂」に所属し伝統俳句ひとすじに来た俳人である。句集『風樹』は第三句集となる。 題名は「花鳥諷詠」から、第一句集は「花」に因み『梅華』、第二句集は「鳥」に因み『初鶏』としたので、今回は、「諷」の「風」から『風樹』とした。“風樹の嘆”の思いもある。 と、「あとがき」に書く。 残菊の裏庭に日のまはりたる 雪吊に雪なき松の匂ひけり 雛菓子のひひなも十二単着る 蒟蒻を掘る山影を重く負ふ 日のカンナ緋のカンナ火のカンナかな わが去りしあと秋水に誰も立たず セーターに初老といへる若さあり 悴んで六十代に未練あり 籐椅子の古るまま向きを変へぬまま 膨らんで一粒となり滴れる 高瀬さんは、その「あとがき」にも書いているように日本全国にある270ほどの虚子の句碑のほとんどを六年間かけて訪ね歩いた方だ。そして日本伝統俳句協会の機関紙「花鳥諷詠」にその探訪記事を書き、写真つきで紹介をしつづけた。その信念と労力はすごい。「あとは十基を残すだけ」であるとのことだ。本当にフットワークがよろしい方でこの句集をすすめるている間も何度もご来社下さった。 本句集をまとめるに際し、句帳を読み返してみると、単に句会や俳誌に出句のためといった安易に言葉を並べただけのものが目につき、以前の自作との類句類想句も散見された。そして、句意が表面に出て報告に終ってしまっていたり調べが重くなりがちで、俳味や趣きが薄れているといった感もある。 これらを今後の課題としつつ俳句を楽しみ句会を楽しんでいきたいと思っている。 俳人として十分成熟している方であると思うが、「あとがき」を読むとご自身の作品を厳しく分析しこれからの方向性を見つけようとされていることがわかる。俳句という詩形はひとたび関わるとさらなる高みを目指すことを余儀なくされる。 薄つぺらな葉が一枚や水羊羹 誰れ彼れに少年の頃木の実落つ 花の寺一年生の来てをりし 八羽まで数へ軽鳧の子まだ居りし 波走り来て万緑の端濡らす 母が子を呼んでいつもの春の暮 この句集『風樹』の編集を担当したのは優明美さん。 「優明美さんがいちばん好きな句はどれ?」って帰り仕度をしている優明美さんに聞いてみた。 「そうですね」って言って優明美さんは次の句をあげた。 微風あり微光あり竹皮を脱ぐ するとそばげ聞いていた愛さんが、 「渋いねえ……」とひと言。 いまブログでこの句集を紹介させていただきながらじゃ、わたしはどれが好きかなとふたたび頁を繰る。 あった。今の季節のものだ。 梅白しふるさとは人争はず わがふるさとはどうだろう。 やがて、いろんな親しい人の顔が浮かんできた。 今日はひとりお客さまがいらっしゃった。 横澤放川さん。 ご友人の詩集の原稿をもっての来社だ。 名張市に住む井上芳子さんと亡くなられたご主人の相聞詩集とも呼ぶべきものだ。 すべて、横澤さんに任されているということ。 いろいろな詩集をみて、フランス装で活版印刷でいくことになった。 「遅くなってごめんなさい」っておっしゃるから、「本当に。一刻も早くゲラをくださいませ」って申し上げた。もう少しするとお仕事がひと段落するという。 わたしはすこしでもはやく中村草田男精選句集を刊行したいのである。 これもまたふらんす堂文庫として刊行したい。 乞う、ご期待を。
by fragie777
| 2011-02-15 21:33
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