ふらんす堂編集日記 By YAMAOKA Kimiko

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枯野と牡蠣フライ。

11月19日(金)

枯野と牡蠣フライ。_f0071480_18453657.jpg
金沢市・浅野川で遊ぶ鴨。


もうスタッフはみんな帰ってしまってわたしがひとり淋しくパソコンに向かってブログを書くためにキイボードを打っている。キイボードを叩く音が蛍光灯に照らされた部屋に響きわたり、ああ、わたしも早く家に帰りたい……。
今日の夕食は牡蠣フライをする予定。(←大好物なのさ…)
さっ、ともかくもがんばろう。


新刊句集を紹介したい。
小野崎清美句集『白雲を待つ』。第一句集である。俳誌「百鳥」(大串章主宰)に所属し、序文は大串章主宰、跋文を先輩の櫛原紀伊子さんが書いている。
 ロケ班の白雲を待つ花野かな
句集名となった作品である。
上掲の作は、白雲と花野の取合せによってスケールの大きな句になっている。小諸に生まれ長野に育った小野崎さんは、花野に愛着を感じている。その花野に白雲が流れて来るのがうれしいのだ。
序文の大串章主宰の一節である。そして小野崎清美さんの俳句には「花野」の句が多いことを大串主宰は序文に書き、一方櫛原さんは「雲」の句が多いことを跋文に書いている。集名となった句はそのどちらも満たしている。ほかに、「雲の影われを追いぬく花野かな」という作品もある。
 大花野何処かに杖を忘れけり
 晴れすぎて空いびつなる花野かな
 ふりむけば亡き友ばかり大花野
 噴煙の倒れてきたる花野かな
「花野」の句をあげてみたが、「ふりむけば」の句にはぎょっとした。秋草が咲き乱れる野をそぞろに歩いていきふと振り返るとそこには死者ばかりがいるというのだ。これはコワイ……と思ったのだが、小野崎さんにあってはむしろ、懐かしく親しい人たちの笑顔が花野を楽しみながらやって来る、そんな思い出の豊かさに溢れた作品なのかもしれない。
 桜桃忌灯ともせば雨となりにけり
 白雄忌の草ひんやりと信濃かな
 竹林に日差しのすべる実朝忌 
 雑踏にまぎるる別れ啄木忌
 一茶忌の暗がりに立つ竹箒
 口笛の風に散りゆくレノンの忌
「忌日」を詠んだ句がさまざまに収録されているがどの句も味わいがある。そして今は亡きお母さまを詠まれた句も紹介したい。
 風花や手を振る母へふりむけず
 春雪に余命ゆだねて母眠る
 初花を母の柩に納めけり
 春雪の浅間山よ母の忌なりけり
小野崎清美さんは平成六年「百鳥」に入会以来、ひたすら写生と抒情を学んできた。ここにはその成果が見事に結実している。
この句集に寄せる大串章主宰のことばだ。跋文の櫛原紀伊子さんは丁寧に作品を鑑賞しながら、
『白雲を待つ』のこの一本が誕生されたことに心から拍手を贈ります。私の幼いときから好きだった山村暮鳥の詩を添えて祝福したいと思います。私も花野に坐り、雲を待ちながら。
と祝福し、山村暮鳥の詩を添えている。
  
  雲もまた自分のようだ
  自分のように
  すつかり途方にくれてゐるのだ
  あまりにあまりにひろすぎる
  涯のない蒼空なので
  おう老子よ
  こんなときだ
  にこにことして
  ひよつこりとでてきませんか

「白雲を待つ」と題されたこの句集とよく響き合っている詩だ。そして、櫛原さんが「おおらかさと落ち着きに共感をもった」句としてとりあげた次の一句、

 ゆつくりとしんがり歩む枯野かな

この句にしばしわたしの心もとどまった。なんだかとても気分がよさそうだ。はればれとゆったりと枯野を歩いていくとき、その心に映るものは何なのだろうか……。


そんな枯野の季節となった。
わたしは枯野を歩くのが好きだ。
日当たりのよい枯野を歩き回りたいなあ……。



でも、

その前に


まずは


牡蠣フライだ……。

 
by fragie777 | 2010-11-19 19:55 | Comments(0)


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