3月28日
薄曇りの一日、咲き始めた桜も冷え冷えとした感じである。最近のふらんす堂は近くの天然酵母のパン屋さんのパンがおおはやり。あるいて一分くらいのところにあって大きな木の枠にかこまれた硝子の引き戸を「ごめんください」というふうにあけると、焼き立てのパンが並べられている。若いパン職人さんが黙ってお鍋のなかをかき回している。ちょっと時間がタイムスリップしたような中世のパン工房にまぎれこんだような静かな光にみちている。すっかりこのパンのとりこになったらしく中井愛も渡辺真紀も今日のお昼はこれ。そういう私も、ドライトマトとブルーチーズと茄子のフランスパンサンドを買う。もちろん食パンも胡桃入りバゲットも、朝食のために。
午後は、関西方面の営業代行をお願いしている多田俊彦氏が来社。春陽堂の営業を長くなさっていて退職後に営業代行の仕事をはじめられた。とびきり明るいフットワークのよいナイスミドルで、ふらんす堂に来るなりおみやげを差し出しながら「はい、これは27歳以下の独身女性だけが食べてくださーい」などと言って笑わせる。ご本人いわく、出会った女性とはすべて「ピンクの糸」で結ばれているとのこと。ちなみに「赤い糸」は奥様だけとのこと。そんなノリで、仕事は手早く、確実に注文を取ってきてくれる。関西方面の品ぞろえに関して、多田氏のちからによるところは大きい。写真は今年の2月にオープンした京都ジュンク堂BAL店、1200坪くらいの大きさの大型書店であるが、詩歌のコーナーにはふらんす堂の本がちゃんと揃っている。
今日は深見けん二氏の句集『水影』の見本が届く。深見氏のところへもまず二冊お納めしてご丁寧なお返事もいただく。書店からの予約の注文も入りつつある。明日は川口に、私の代わりに取次店3社にこの見本をもって委託願いにいってもらうことになっている。いよいよ『水影』が動きはじめる。(山岡喜美子・記)