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10月8日(金)
とうとう出来上がった『能村登四郎全句集』。感慨深い。能村先生が好きだったという「白」の句集となった。この句集についてはまた日を改めて紹介させていただきたい。 実はこれからスタッフたちと食事会をするのだ。 『能村登四郎全句集』刊行について頑張ってくれたカトさん、緑さん、優明美さん、9月の刊行ラッシュを孤軍奮闘した愛さん、そしてわたしの5人で近くの小さなフランス料理のお店を予約してそこで乾杯をする予定である。だからブログも早く書いてしまおう。 新刊句集を紹介したい。 大木あまり句集『星涼』である。すでにいろいろと好評で話題となっている句集である。先日の俳誌「天為」のお祝の会のシンポジウムでパネラーの神野紗希さんがこの句集をおもいがけなく紹介してくださったことはこのブログに先に書いた。そこで紹介された作品は、 頬杖や土のなかより春はくる である。「土のなかより春はくる」という表現についての実感を神野さんは言及していたように思うが、聴衆者のひとりとしてその場にいた比較文学者の芳賀徹さんが、ごあいさつの時に神野紗希さんの話をふたたびそこで披露し、「神野さんが紹介したこの大木あまりさんの作がとてもいいのではないか…」と語ったことも印象深かった。 この度の句集に寄せる著者大木あまりさんの思いはこのあとがきの一行につきる。 涼やかに生きたいという願いをこめて、句集名を「星涼』とした。 星涼しもの書くときも病むときも 集名となった句である。この句集にはすぐれた作品がひしめいているが、わたしはこの句集のテーマでもあり頻出する「涼し」ということばが使われている俳句に目をとめてみたい。 子燕に鼻の穴ある涼しさよ 涼しさを言ふや歩きては止まりては 羚羊の鈴涼しとも重しとも 蝶ひとつ目まぐるしくて涼しくて 眠りつつ涼しき国へゆかれけり (回想 石田勝彦氏) 涼しさを力にものを書く日かな 涼しくて古きは母の喪服かな 青き眼涼しふつつかな猫ですが 帰る刻誰も言はざる涼しさよ 細長き森を出てゆくとき涼し 戦なき国や涼しき猫の髭 髪たばね涼しく病んでゐたりけり どうだろう、おなじ「涼し」という季語を使いながらもこの詠まれている世界の多彩さは。「子燕」の作品が発表されたとき、わたしはこの作品をよく覚えている。なんという可愛らしい句であることか、よし今度子燕をみたら鼻の穴をみてやろうと意気込んでみたのだが、実際はなかなか見られない。しかしこの句を詠むとその子燕の小さな鼻の穴が涼やかにみえてくるのだ。大木あまりさんは猫のみならず生き物への愛情の深い人だ。小さな命をいとおしむ心といったらいいのだろうか……。だがその魂の根底には無常がある。涼しき星を見上げながらあらゆるものが往きて還らぬことをその小さな身体に引き受けているのだ。 猫に鈴われにおぼろの紐一本 かりそめの踊いつしかひたむきに よしというまで消えるなよ曼珠沙華 新宿はひつそり木の実降るところ 骸くるむ毛布何枚あらうとも (アフガニスタン戦争) 去ることが答へか秋のつばくらめ 握りつぶすならその蝉殻を下さい 雛よりもさびしき顔を言はれけり 茶の花や別るるための集ひあり 蝶よりもしづかに針を使ひをり 野の蝶の触れゆくものに我も触る 猫洗ひつつ夕焼けを惜しみけり 訣別は月のひかりがあればよい とほくまで行く霜月の切符かな 逝く猫に小さきハンカチ持たせやる 序章より死があり水の澄みにけり 今日大木あまりさんのところに電話をしたらちょっと体調がすぐれないとおっしゃっていた。 無理をなさらずご自愛を祈るばかりである。 とここに書きながら、「自句自解のお原稿ひとつよろしくお願いします」と言うことを忘れない鬼の編集者のyamaokaなのだった。 今日のねんてんの今日の一句は、大峯あきら句集『群生海』より。 行在所跡とて胡麻を干すばかり 「行在所(あんざいしょ)」は天皇が行幸した際、仮に設けられる御所。各地に行在所があるが、この句のそこは隠岐である。 と坪内稔典さん。 さて、明日からは三連休となる。 しかし明後日の10日はふらんす堂句会の片山由美子教室の吟行会が北の丸公園である。かなりの問い合わせが多く、「どうしようたくさんの人が来すぎてしまったら……」とスタッフの愛さんがいまからドキドキしている。お天気でありますように…。 そして明後日11日は、横浜のブリーズベイホテルにて、「横浜詩人賞の授賞式とお祝の会」がある。ふらんす堂から詩集『キャベツのくに』を刊行された鈴木正枝さんが受賞されたのだ。こちらはスタッフの優明美さんが出席する予定である。 こちらも良いお天気でありますように。 毎日更新サイト、「俳句日記」「短歌日記」「花の一句」はスタッフの緑さんが更新してくれることになっている。 仕事のできる緑さんにまかせておけば間違いない。 明日はヤクルトの最後の試合を観に行くと緑さんは言っていたな……。 ヤクルトの勝利をyamaokaは祈ってます。 こうして、お休みにもかかわらずスタッフたちは一所懸命に頑張っているというのに、すみません、yamaokaは、この3日間東京を離れます。どこに行くかは内緒です。 ですから多分、ブログをお休みします。 皆さまもどうぞよき秋の休日をお楽しみくださいませ。 ああ、ブログを書かなくていいんだ。 ちょっと嬉しい。 新刊紹介もたまっているのだけれど、ごめんなさい。 しばらく娑婆(しゃば)のことは忘れます。 「こころ涼しき日」を過ごしてまいります。 お許しを。 さっ、これからみんなで「お食事会」に行ってきまあす。
by fragie777
| 2010-10-08 18:58
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