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5月6日(木)
![]() 夏をむかえた私たちであるが、開け放たれた窓からすばらしく気持のよい風が入ってくる。 連休明けのふらんす堂のスタッフはみな一心不乱に仕事をしている。 わたしの仕事の滑り出しもまずまずだ。 人間にはやはり休息が必要だ。 さてと、新刊を紹介しなくてはいけない。 江川和彦さんの句集『日永』が出来上がってくる。俳誌「狩」(鷹羽狩行主宰)同人で第一句集となる。鷹羽狩行氏が序句をよせている。 海に出て川の遊べる日永かな この序句を読んで、 「さすが鷹羽先生、句集名を入れてしかも著者の名前の川も入ってる!」 と私が言うと、担当の愛さんがつかさず、 「yamaokaさん!川だけでないんです。『海に出て』で、江も詠まれているんです」と。 「あら、まあ、さすが挨拶句の名手でらっしゃるわねえ!」と驚くわたしたちだった。 句集名の「日永」は、 たつぷりと叱られてゐる日永かな による。「人を育てるには、『褒める』ことと『叱る』ことが必要です。『日永』の季語のように、ゆとりを持って(相手のことを思いやって、あたたかく)諸先生方、諸先輩方に叱られることによって、蜷のような遅々とした私の歩みでも、なんとか第一句集を出すことに漕ぎ着けました。」と「あとがき」にある。 汗ふいて事荒立てることはせず 秋扇ほどの値打ちもなかりけり ハンカチを畳み直して妥協せず 白魚をあはれあはれというて食ふ 江川さんの俳句の特徴のひとつに「人事の機微を季語の力を借りて巧みに表現する手法」があると、杉良介氏はその跋文に書いている。そして、人間観察にすぐれ「人心の機微に触れるような表現が垣間見られる」と言う。 またよりを戻せしふたり日向ぼこ 何をするにも一家言秋厚し 言訳を探して薔薇を見てをりぬ 跋文によると江川和彦さんは、たいへんなエリートでいらっしゃるようだ。人事句にすぐれているというのも、その経歴とあながち関係がないわけでもないようである。しかし、俳句の世界に身をおく江川さんは、とても謙虚な方でいらっしゃる。先に引用した「あとがき」からもそのことは十分伺いしれるが、タイトルの「日永」についても、杉良介氏が「どちらかというと地味な句集名なので、もう少し目立つものにしたら、と勧めたのだが」ご江川さんのご希望によって「日永」となった由である。「日永という季語のように、ゆとりを持って、あたたかく生きたいから」というご意向とのことだ。担当の愛さんによれば、こちらで用意したブックデザインのなかで一番地味なものをやはりお選びになったということ、すべてにつけて謙虚なお方だ。 あんぱんのへその丸出し冬ぬくし 野遊びや母より少しずつ離れ 春暁や自転車がわらわらと現れ (上海) 「私としては、できれば将来、第二句集を出したいと思っており、それに向けて精進してゆく所存でございますので、これからも引き続きご指導のほど、お願い申し上げます」と「あとがき」を結ぶ。 初蝶にはや屋根を越すこころざし ところで、柏餅食べました? わたしは食べ損ねていたのできょうのおやつは柏餅を買って、スタッフ皆で食べました。 爽やかな葉騒を聞きながら、柏の葉っぱを丁寧に剥いてもっちりとして指にねばつくお餅を口に入れた。 あんこがあんまり甘くなくて涼しい甘さが口中に広がった。 「おいしいねえ…」って言いながら、わたしたちはかつて子どもだったころのことなんか思い出し、そして柏餅を食べたのだった。 子どもの日があって、空に鯉が泳いでいて柏餅を食べられるなんて、きっと日本だけだと思うなあ…。
by fragie777
| 2010-05-06 18:35
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