カテゴリ
以前の記事
最新のコメント
検索
画像一覧
|
3月26日(金) 桜始開
寒い朝に出合うみつばつつじは、はっとするほどの幻想的な美しさだ。 新刊句集は、岸遊子さんの句集『みどりの風』だ。岸遊子さんは、俳誌「鷹」(小川軽舟主宰)同人。俳誌「万蕾」、「木語」を経て藤田湘子に師事し、湘子亡きあとは小川軽舟氏に師事し現在に至っている。小川氏の序文によると、「人生の転機」に、かつての名前を捨てて、「鷹」に入門したという。その「人生の転機」とは、「夫の死」であったということである。「岸遊子さんはちょうどそのような時期に」「一新人として再出発し大きな飛躍を遂げた。この句集はその軌跡である」と序文にある。 出直さむ寒潮の香の胸に満ち 水仙やあやふき心立て直す 最初に置かれた作品だ。この句集を読み進んでいくとそこに立ち現われるのは、ある激しさをもった意志の強い女性の姿だ。 さつぱりと戸籍一人や雛飾る 花あかり夫との一生(ひとよ)終りけり 絶叫の辛夷の花となりゐたり ぐるりと山ぐるりと桜命惜し 人恋はず裸木をわが拠りどころ 炭をつぐ家は売らずを決めにけり 「平成十七年春、岸さんが心の拠り所とした湘子が亡くなる。岸さんはどれほどがっかりしたことだろう。ところが不思議なことに、湘子が亡くなってから岸さんの俳句はむしろ大きくなった。」と小川軽舟さんは書く。 ジェットコースター絶叫なす炎天 ふはつとぶだうぱんの香冬浅し 臘梅をはなれてよりの血のぬくみ 「今生の師に逢ひゐしよ梅真白」とその師・湘子を詠んだ岸遊子さんだった。その「あとがき」に、「藤田湘子先生・小川軽舟先生とこの上ない師にめぐまれました。講義はいつも目の覚めるような思いで、いまでも折々の講座が待遠しいものです」と記している。この句集をとおして、わたしはすぐれた指導者に出会うことのできた至福というものをあらためて考えさせられた。先師・藤田湘子のこの上ない厳しい指導、そしてその精神を受け継いだ小川軽舟氏の懇切なる指導、それに全幅の信頼をよせている岸遊子さん。 さらに「あとがき」で岸さんはこう書く。 「今日は、『食い縛るんだ』の先師の大声が降ってきそうな青空です」と。 我若しみどりの風と雪渓と 句集のタイトルともなった作品でこの句集の最後の方に置かれている。しかし、わたしは岸さんの略歴を見てさらに驚いたのだった。こんな若々しい俳句をつくる岸遊子さんがすでに八十歳であることを。 わが息のかかりし蝶の立ちにけり 岸さんの若々しい息にふれて、蝶はふたたび命を輝かせて飛び立ってゆく。 その蝶はまた岸さんご自身でもあるかのように、瑞々しいみどりの風をひきつれて……。 今日の午後は、ふらんす堂はたいへん賑やかになった。 春風にのって、幼子たちがやって来たのだ。 ブックデザイナー君嶋真理子さんの長男の芳郎君と、ふらんす堂のスタッフだった真紀さんの長男の英明君がお母さんと一緒にふらんす堂に遊びに来てくれた。 芳郎君は一歳になったばかり、英明君は6カ月、わたしをふくめてスタッフたちは仕事の手をやすめてふたりの男性をもてなした。 貴公子のように美しい英明君と、ふらんす堂を風のような速さで這いまわる芳郎君。 わたしたちは男子ふたりにすっかりすっかり振り回されてしまったのだった。 律子さんに抱かれてにっこりする英明君。 一瞬たりともじっとしていない芳郎君。 君嶋さんも真紀さんもすっかりお母さんぶりが板につき、ふたたび春風のなかを幸せそうに帰っていった。 その後… わたしたちが猛烈に仕事をしたのはいうまでもない。
by fragie777
| 2010-03-26 19:00
|
Comments(5)
Commented
at 2010-03-27 15:35
x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented
by
fragie777 at 2010-03-27 23:59
大田さま。
そうでしたか。ご尊父とおなじお名前でしたか。 善郎君。 とても元気な男の子です。 善郎くん、英明くんへのエールをありがとうございます。 また、ebookへのご感想もうれしく励まされます。 (Yamaoka)
0
Commented
by
fragie777 at 2010-03-30 17:46
大田さま。
すみません。 わたし、芳郎くんの名前をまちがえてしまいました。 善郎くんではなく、芳郎くんでした。 ほんとに粗忽者で…。 大田さま、芳郎くん、 ごめんなさい。 でも、コメントをいただいたこととても嬉しくぞんじました。 (yamaoka)
Commented
at 2010-04-07 23:36
x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented
by
fragie777 at 2010-04-18 21:47
大田さま。
コメントをいただきながら、お返事がおそくなりました。 いろいろとお心にかけていただき、有難うございます。 いただきましたご感想もとても参考になりました。 これからもどうぞよろしくお願いいたします。 有難うございました。 (yamaoka)
|
ファン申請 |
||