3月2日

歩いて仕事場に行く途中、かの失われつつある雑木林のそばを通る。
ショベルカーが、勤勉に働いていて伐採は着実にすすみ、掘り返された土はたっぷりと水をふくんで黒々としている。そこにあざやかなピンクのみつばつつじのような花をつけた木が根元から掘り返されて、痛々しく横たわっている。まるで、ピンクのドレスをまとった貴婦人が倒れているよう。ブルドーザーとショベルカーの音が空を打つ。少しはなれたところに鵯がいて、あたかも抗議の叫びをあげているかのようにはげしく鳴き叫んでいる。なんとも切ない朝の風景。私は黙って傍を通り過ぎるのみ。
雨宮きぬよ氏が主宰する「百燈」が十周年を迎えられた。五周年に引き続き、合同句集をふらんす堂でおつくりさせていただいた。A5判のサイズを三分の一ほどカットした上製本の贅沢な本である。前回に引き続き、中井愛が担当して五周年の本にまけないような美しいものをと装丁の君嶋さんともども頑張ってくれた。題字の「百燈」は金箔なのであるが、黒く見えてしまうのがかなしい。
本が出来上がった当日、俳誌「百燈」の記念号もお送りいただく。
はじめからおわりまで、雨宮主宰の神経のいきとどいた美しい俳誌。表紙の画は、今年の干支の戌を書家が一幅の画のように書いたものであるとのことである。(山岡喜美子)