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12月18日(木)
冬晴れの日の水は、どこもはっとするほどの青空を映しだす。 若い歌人の歌集が出来あがってくる。永田淳さんの歌集『1/125秒』だ。 永田さんは、歌人の永田和宏さんを父に、おなじく歌人の河野裕子さんを母に、そして歌人の永田紅(こう)さんを妹にもつという、およそ、この世にうまれでて歌人でないことなどあり得ないようなそういう環境で歌人になった方だ。しかも永田さんのお仕事は、京都でおもに歌集出版を中心とした「青磁社」という出版社をやっておられる。まさに短歌の世界のなかで生きている方だ。短歌の世界から脱出しようとしたら、一千メートルくらいの目の前にそびえたつ壁を素手でのぼって越えてゆかなくちゃならないかもしれない…。いや、地球から脱出しなくてはだめかもしれない…。いずれにしてもたいへんなことだ…。歌壇におけるかくもサラブレッドのような方の歌集をなにゆえ東京のはずれにある仙川町のふらんす堂が出版させていただくことになったかというと……、 それはね、フフフフッ…ひとえにわたしの美貌によるものなのですよ。 数年前のある日、角川書店で毎年行われる俳人、歌人を中心とした新年会に出席したところ、そこにこの若き歌人もいて、一目でわたしの美しさにクラクラっとなった彼が、 「ぜひ、yamaokaさんのような美しい方にボクの歌集をつくっていただきたい!!」 と懇願され、まあ、そういうことならと、お引受けいたしましたの…。まあ、これまでこういうことはよくあるので、珍しいことではないのですけれど… …んなことは…断じてあろうはずはない! ごめんなさーい、真っ赤なウソです。 こんなことだったらいいのになあ…というわたしの愚かな夢でございました。 冗談はさておき、この新鋭歌人の歌集『1/125秒』は、とてもいい歌集だ。優しくのびやかな青年のまなざしがあり、子供たちや妻をみつめるこころがすがすがしい。自分の子供を詠っても、そのとなりにはかつて子供だった自分がいて、その少年も生き生きと息づいている…、そんな不思議さがあり、読み終えたあとの本をとざすときの空気がきれいなのだ。なにか瑞々しいものがわたしの心に呼び覚まされた、そんな手ごたえがある歌集だ。 栞に、歌人の高野公彦さん、大辻隆弘さん、松村正直さんが文章をよせておられそれぞれがこの若い歌人の美質にふれている。 子を寝かし降りくるあなたが日々伝う火星の赤さ今日藤村忌 どこまでもこの低雲は俺のもの小さきボートに一人釣りおり 人はみな夏が好きだということを疑わざりき去年までの夏 家内に訪いきてやがて去るものは風と呼ばれて遥けき歳月 驟雨きて驟雨は去りてまだ浅き春の夕暮れ暮れ残りたり くまぜみの翅のように世の中を透徹して見られたら嬉しい 思わず笑ってしまった歌を二つ…。 宮柊二寺山修司島田修二吾もしゅうじとう名前が欲しき よく陽にあたるようによく風が通るようにそういうように洗濯物干す 永田淳さんは、妹の紅さんとともに『昼寝の国の人』にも、原稿をくださっている。その鑑賞がまた面白い。 今日の船団ホームページは、石田郷子さんの句集『木の名前』 より。 めぐりては水にをさまる百合鴎 「水にをさまる」の表現が、「なかなかこうは言えないのではないか」と鑑賞者のふけとしこさん。ふけさんのお住いは道頓堀川に面していると書かれているが、「道頓堀」と聞いただけで浪速ことばがおいかけてくるような大阪風情がたちあがってくる。と言ってもわたしは「道頓堀川」を実際には知らない。あの、阪神が優勝するとファンが景気よく飛びこむというあの川ですよね。百合鴎もやってくるということだけれど、人間がおっこってきたら百合鴎もびっくりもんですよね。きっと…。
by fragie777
| 2008-12-18 20:21
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