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3月30日(土) 雷乃発声(らいすなわちこえをはっす)
花の雨の一日となる。 もう10数年以上も前のこと。 わたしは、ガリ版ずりの美しいはがきを定期的にいただくようになっていた。 エッセイストの串田孫一さんのご縁だったとおもうが、その絵葉書は、3週間から4週間くらいのあいだをおいて、季節の匂いをたっぷりさせてわたしの手元に届くのだった。 あべみつこさんのガリ版の画と文、旦那さまの安部和夫さんの「ぼくの四方山通信」がつづられていて、山を愛するおふたりのお便りだった。 2002年の2月22日付けの最後のはがきまでそれは続いた。 つい先日、そのあべみつこさんからご案内をいただいた。 ああ、なつかしい… 「春は一杯のコーヒーから・あべみつこ展」とあり、個展のご案内だった。 長い間おたよりをいただき続けたのに、わたしはまだ一度もお会いしていない。 ああ、会いに行こう。 そのご案内には、 はかなくて過ぎにしかたを数ふれば 花に物思ふ春ぞ経にける 式子内親王 の歌が引用され、 「会期中に桜が咲いてくれるといいなと思ってます」とある。 中央線沿線の雨にけぶる満開のさくらを眺めながら、わたしは高円寺の茶房「高円寺書林」へと向かったのだ。 クラシカルの趣きの書店をかねた茶房は、あべみつこさんの明るい作品が飾られて、ご夫妻が親切にむかえてくださった。 「ふらんす堂のyamaokaです」と挨拶をすると、あべさんの表情がぱっと明るくなって、 「ああ、ふらんす堂さんですか! 頑張ってらっしゃいますね。新聞で拝見したりして、応援しているんですよ」と言われる。 ガリ版。 わたしたちが小学生のころ、学校新聞をつくったりするのがガリ版だった。 そう、テストもわら半紙に刷られたガリ版だった。 あの独特なにおい。紺色のインク。 ガリ版というとそんな貧しい記憶しかなかったわたしに、ガリ版の美しさを教えてくれたのが、かつていただいていたあべさんのはがきだった。 来年は、熊谷守一美術館で、個展をなさる計画があるという。 「頑張って作品をつくらなくては…」と言ってあべさんは明るく笑った。 その茶房でおもいもかけない本に出会う。 今日の朝日新聞の書評で紹介されていたものだ。 寺山修司未発表歌集 『月蝕書簡』 おもわず買い求める。 面売りが面売りと逢う港町われは一人の母をさがして この歌は、数日前にわたしが観た芝居(寺山修司原作)へとつながるものではないか…
by fragie777
| 2008-03-30 00:17
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Comments(2)
yamaokaさま、ご来店いただきましてありがとうございました。
あべみつこさんのおかげで、すてきなおとなの春をあじわっていただくことができました。 これをご縁にどうぞよろしくお願いいたします。 茶房 高円寺書林 原田直子
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fragie777 at 2008-03-31 22:15
ご丁寧なコメント恐れ入ります。
すてきな茶房で、お茶をいただきたかったのですが、 たくさんの人で遠慮をいたしました。 でも、売られている書籍が、面白いものばかりで、 (面白い椅子もありました) 懐かしい香りと独特の世界があって、こんなお店がそばにあったら 毎日でも通ってしまうのに… と思ったのでした。 こちらこそどうぞよろしくお願い申し上げます。 (yamaoka)
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