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10月12日(金)(2)
今日は日記をふたつ書くことになる。 知人が亡くなった。友人というには遠い存在だ…。友人でフランス文学者の高遠弘美さんからの電話で知ったのだ。高遠さんにとっては、大学でともに学んでよりのなんとも大切な友人だった。「三川 基好氏(みかわ・きよし=早稲田大教授、英語学)9日午前9時15分、食道がんのため盛岡市の病院で死去、57歳。東京都出身。」これはasahi.comよりの記事の一部である。おそらく朝日新聞の今日の訃報記事もおなじはずである。あまりにも突然の死におどろくばかりである。大学の先生というだけでなく、おおくのミステリーを中心とした翻訳をてがけ、意欲的に仕事をしているときの急逝であった。大学時代のOクラスというクラスの同級生だった。70年安保世代のわたしたちは大学に行っても、授業は休講つづき、限りなく自由な時間が目の前にひろがるばかりで、こころの空白をもてあますように大学食堂のいっかくに屯していたものだ。それでもOクラス闘争委員会などをつくってヘルメットをかぶってデモ行進をしたり、クラス討論会などで明け暮れたそんな青春という無為な時間をすごしていたのだ。しかし、高遠さんや三川さんたちは違っていた。背筋をのばし、沢山の書物のはいった大きな鞄をさげていつも三.四人で静かに歩いていた。かれらのうちの一人がOクラスの美少女と恋をしているという噂が流れた…。そうして月日が流れていった…。 高遠弘美さんのすぐれたエッセイ集『乳色の花の庭から』をふらんす堂で刊行させていただくというご縁によってわたしたちの交流は復活し、その出版のお祝いをかねてOクラスの仲間が集まった。三川さんもそこにいた。あいかわらず飄々として、早稲田にのこって教授になったことを知ったのだ。英米の推理小説の翻訳物をてがけていることもそこで知った。高遠さんに今日教えてもらったのであるが、かれの最後の翻訳がレイモンド・チャンドラーの短編であったことを知った。チャンドラーは大好きな作家だ。なんど繰り返し読んだかわからない…。きっと三川さんも、フィリップ・マーロウをおもいながらギムレットを味わう夜があったにちがいないとおもう。五十代は正念場ではなかったか。これからも多くの仕事をしていくはずであった三川基好はさぞ無念だったかとおもう。 以下は高遠弘美氏のサイトよりそのままペーストさせていただいたものです。 「涙が止まらないままに、インターネットで三川基好を検索。 以下の逸文を見つけた。 はじめまして お願ひしたい。たとへばアマゾンで「三川基好」と検索してみることを。 そして年代順に並びかへることを。さうすれば、この傑出した才能を持つ男がここ十数年間にどれほど仕事をしたかがわかると思ふ。十年間で個人訳が六十一冊。ありえない数といふしかない。 悔やみても悔やみきれぬ。悲しみは募るばかりである。」
by fragie777
| 2007-10-12 19:55
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