3月23日(金)
六本木の「ストライブハウスギャラリー」の詩の朗読会よりいまもどったところである。2004年にふらんす堂から詩集『メテオ』を刊行された木村透子さんが、きょうここで詩の朗読をなさったのである。お目にかかるのは詩集の刊行いらいである。作品の朗読はこの詩集をはじめから終りまで朗読されたのであるが、耳をとおして聴く詩のことばはまったく新しい詩の作品にふれるようにわたしには新鮮であった。
『田中裕明全句集』のための栞の文章を小川軽舟氏よりいただく。静かなこころで作品と著者のありようを見据えたいい文章である。さっそく刊行委員の山口昭男さん、対中いずみさん、夫人の森賀まりさんにお送りする。対中さんより「深いところで頷けるいい文章でした」と返事をいただく。
今日の昼休み、みなでまったりしていると、とつぜんスタッフの加藤が「ねえ、『泣いた赤鬼』のはなしって知ってる?」と言う。そういわれるとどんなはなしだったかなあ、と一度は読んだことはあるけれどちゃんとは話せない。やおら加藤が「わたしもこれ最近、アニメの『ケロロ軍曹』で仕入れたんだけどさあ」って言ってはなしてくれた。「……あこがれの人間たちと仲良くなれた赤鬼にね、青鬼がね、人間たちをいじめてばかりいた自分のようなものがそばにいたら、赤鬼に申し訳ないっていって赤鬼のそばを去っていくわけ、それを知って赤鬼が泣いたっていう話しなの」と。それを聞くと、わたしたちは思わず声をそろえて「いやあー、もえ(萌え)〜!」って叫んでしまったのだった。赤鬼と青鬼のなんともぐっとくるせつない話しである。「切ないといえば」って言ってこんどはわたしが話しだしてしまった。「『ゴンぎつね』って話し知ってる?」「ああ、あれね」というスタッフが多いなかで加藤はどうやら知らなさそう。「あれって最後ぜったい泣くよ」「そうそう」とみんな。しらない加藤のためにわたしは2分(?)で話しをした「……鉄砲でゴンぎつねを撃ち殺したあと、食べ物をとどけてくれていたのがゴンぎつねだったことを知った若者がね『おまえだったのか…』って言うの、そこがなんとも切なくてね、泣けちゃう…」とわたし。「わ、わたしいまの2分の話しでもうウルウルしてきましたあ」と加藤。ほんとうにかわいそうなゴンぎつね……。
そんなこんなで日本昔ばなしにひととき心をかよわせたなんとものどかで切ない昼休みでありました。