3月16日(金)
写真は昨日みたミモザ。すごいでしょ。いつもは気づかずにとおり過ぎてしまう家なのだけど、なにかに呼ばれるような気がして、その家の裏まで行ってみるとこのミモザの花盛り。すこし太った妖精がちょっとシナをつくってダンスしているみたいでしょう。おなじ庭に花辛夷が清楚な盛りをみせていたのが昨日の写真。
ミモザっていう言葉を聞くとまっさきに思いうかべるのが、大島弓子さんの漫画「ミモザ館でつかまえて」。わたしにとって大島弓子さんていうとまずこの漫画となるのだ。なにしろ、この漫画をコミック誌で連載中に読んだのが、大島弓子という漫画家との出会いとなったのである。あなたにとっての大島弓子の1冊は、って聞かれると、ある人は「バナナブレッドのプディング」と答え、またある人は「秋日子かく語りき」と答え、ある人は「綿の国星」と答え、わたしの家にいるどうやらわたしが生んだらしい態度のでかい女は「ロストハウス」と答える。大島さんをささえるファン層はなんと年齢層が広い(こういうときって厚いって書くのかな)のだろう。そうそう「サバ」の話や「グーグー」の話なんて猫好きにはたまらない。しかし、わたしにとっての一冊はやっぱり青春時代に読んだということもあってこの「ミモザ館でつかまえて」ということになる。新任の美しい女教師と孤独な少年の心のふれあい、と書くとなんと陳腐な安い物語となるのであるがそれが大島弓子さんの繊細なタッチのもと西洋の粉という香りがふりかけられて美しい洋館にすむ住人のお話となるのである。亜麗(あれい)という少年が背筋を伸ばして「oui, madame ウイ、マム」というときの素敵なこと。亜麗よ、亜麗、そんな名前をもっている男なんてみじかにいなかったなあ。んなわけで、わたしはこの「ミモザ館でつかまえて」によって大島弓子の漫画を出発したのであった。
今日の夕方に深見けん二氏が来社される。お姿を拝見するのは本当にひさしぶりである。昨年の暮に奥さまが体調をくずされ、入院、手術という大変なことがあり、いつも奥さまにささえられていた深見先生なので、大丈夫かしらとわたしも心配をしたのであるが、奥さまも無事に退院されいまはとても元気になられた様子。お電話の先生の声も明るくなって、今日はお弟子さんの吉井まさ江さんと一緒にご来社なさったのである。吉井さんの句集のうちあわせと深見けん二氏のこれから刊行予定の評論集「折にふれて」のゲラの打ち合わせにと。いろいろな会合を控えられてこられたので本当にお目にかかるのは久しぶりとなった。お元気なご様子であいかわらずの清廉なたたずまいのすてきな深見けん二氏であった。