1月25日(木)
暖かな冬の日がつづいている。仕事場まで歩いてゆけば、いたるところで青空に照り映える冬木の美しさが目にとまる。もうすでに力強く芽をつけはじめているものもある。なんという気持ちのよい朝。青い空が目にいたいほどである。そんなとき、ふっとなんの脈絡もなく、かつて高田馬場の小さな映画館でみた『真夜中のカーボーイ』を思い出す。都会の光と闇にほんろうされぼろぼろになったジョーとペテン師ラッツオがそこへ行くことを夢見たフロリダの空もこんな青い色をしているのかしらん、と。あの救いのないラストシーン。七〇年代の若者の心をとらえた映画って『俺達に明日がない』にしろこの映画にしろどうしてこう救いがなかったんだろう、そんなことを考えてしまうのはこの、あまりにも明るい日差しのせい?
「ふらんす堂通信111」が夕方近くになってようやく出来上がってくる。今日中に発送を済ませてしまおうと、準備万端ととのえてスタンバイしていたスタッフたちはここぞとばかりに通信にとびついて、発送をはじめる。すばらしいスピードだ! ふらんす堂のどこかに身をひそめていて、わたしたちが窮すると現れるマッハの神が、ひとりひとりに宿ったかのように、美しく無駄のない動き。わたしは嘆息して見つめるのみ。やがて、発送は完了、明後日には待っていてくださるかたの御許に届けられる。ほんとうにみんなご苦労さま。
ある女性俳人のかたから手紙をいただく。若いひとといっていいかもしれない。そこには、これから句集をだしたいとおもっていること、装丁の美しさからふらんす堂を版元として考えているということが、書かれていた。そして恥ずかしながら、このブログも読んでいて下さってるという。かつて書いた「スカートを自転車にまきこんでボロボロにした話」(まこにお恥ずかしい話)を読んで、「ふらんす堂に決めた」とおっしゃる! びっくりです。あんな恥ずかしいことが立派に営業として役立ったとは…。(このところ、こういうブログを書いていく意味があるんだろうか…と思っていた矢先のことなので)嬉しい…。「ええ、ええ、これからだって何枚だってスカートを駄目にしますわよっ、わたし。」と私は感極まって叫んだのだった。