11月9日(木)
今日は、俳誌「紫」の創立65周年、750号記念祝賀会が川口市の市民ホールであるので、午前中には仕事場を出る。12時半から開会なのだ。まず、マブソン・青眼氏による講演があるはずで、これは楽しみである。ネット検索をして効率よく電車を乗り換えていったはずであるが、すこし遅刻をしてしまう。でも講演はこれから。テーマは「日本の現代俳句について」で「『写生』を超越した『俳諧ルネッサンス』を求めて」と副題がある。すごいぞ、これからの新しい俳句のありようを芭蕉、蕪村、一茶を読み直しながらさぐっていこうとするものである。話しはわかりやすく、レジメもきっちりとしていて、決して堅苦しくなく楽しい講演だった。「虚子以来、われわれ近・現代人を”束縛”してきた『写生』という芸術論は、(中略)俳風の真髄と関わるものでなく」と結論し、「俳諧ルネッサンスの鍵は国境を知らない、広い視野と柔軟性にある」として、「国際性こそ俳諧性であり、俳諧性こそ国際性であります」と日本で俳諧を学ぶフランス人らしい結論である。これは大ざっぱに要約でありこの見解を手放しで受け入れるというのではないがとっても面白く新鮮な講演だった。日本の俳壇にマブソン・青眼さんはきっと新しい風を吹き込んでくれるんじゃないかと思う。いや、もうその風は吹きはじめているのかもしれない。マブソン・青眼さんは話す姿勢がとても清々しい人です。それに、「ジャンル」っていうときや「半」とか「反」の「ハン」って発音するときフランス語特有の、鼻にぬける音になっていてそれがとても柔らかく美しかった。この講演を企画された「紫」主宰山崎十生氏にあらためて拍手をおくりたい。
写真は川口市の駅前にあるベンチ。川口の駅ははじめて降り立ったのであるがずいぶん整然としてきれいだった。かつて観た吉永小百合が素晴しい演技をした「キューポラのある街」はこの川口の鋳物工場で働く人たちをえがいた映画だったように記憶している。あの映画と今日の川口市の駅前の様子はすぐに結びつかなかったけれど、今日の会のあった川口市民ホールがはいっている建物は「キュポ・ラ」という名称であるのだった。