10月16日(月)
目下ふらんす堂は「ふらんす堂通信」の編集作業でおおわらわなのであるが、その忙しいさ中をぬって、加藤泰子が薦田愛(めぐみ)さんの詩集『流離縁起』のポップをつくってくれた。それがこの写真。あくまでも本のイメージを生かそうということで、暗緑色と鮮やかな赤の2色にこだわったのであるが、写真のものは緑が少し暗くなってしまい、今日実際に出来上がったものの方がずっと明るく仕上がったのではないかと思う。昨日の「かびれ」の記念会でビンゴゲームがあってそこでめでたく「ビンゴ!」と叫び景品をもらったのであるが、それは小さな無地の色紙が10枚、ちょうどこのポップにぴったりでいままでにはない金の枠つきのポップが出来上がった。なんてゴージャスなポップ!
昨日の朝日新聞の大岡信氏による「折々のうた」は、丹間美智子さんの句集『鎌倉囃子』の作品から。ふらんす堂のスタッフは誰も知らなかったのであるが、これはふらんす堂の刊行の句集である。1991年の刊行でわたしがひとりで本造りの仕事をしていたときのものである。丹間さんは鎌倉でカレー屋さんを当時営んでおられて、「寒雷」と「炎環」(石寒太主宰)に所属しておられた。加藤楸邨氏がまだご健在のころでこの句集のために題簽を書かれている。この句集を刊行する少し前に加藤楸邨句集『猫』をふらんす堂で刊行したばかりで、猫好きの丹間さんは、この『猫』の句集をみて、ふらんす堂で句集をつくろうと思ってくださったということであった。装幀は同じ「炎環」のお仲間のコスギ・ヤエさん、猫好きの丹間さんのために猫のカットが輪郭のみで描かれてある。こんな大分前の句集なのにとりあげられたことはとても嬉しい。再びこの句集が息を吹き返したような思いがしている。さて、その一句。「露草や暗渠に風の通り道」。ほかにもう一句「冬日差しくるりと嬰児洗ひたり」。
仕事を終えて一足先に帰り支度をはじめている加藤泰子であったが、スタッフの間でなにやら話しが弾んでいる。「……、川口さん!、わたしにとって川口さんはお姑さんにしたい人No.1なんですからね!」と加藤が言えば、「ええっ、お姑さん? せめてお姉さんくらいにしてくれなーい」と川口。ふらんす堂勤務が一番長い川口とまだまだ年数の浅い加藤なのであるが、いったいどっちが威張っているのって言うくらい、川口は可愛らしい先輩なのである。加藤など毎日のびのびと川口にツッコミをいれている。しかし、静かにふらんす堂の動向をみすえている渡邊真紀に言わせると、川口は「影のドン」であるらしい。おお、こわっ……。