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11月19日(金) 旧暦10月15日
朝、体重計に乗った。 ややっ、体重が1㎏増えている! イカン。 と、いうことで歩いて仕事場へ。 皇帝ダリアだ。 ああ、もうそういう季節か。。 花びらが朝の光に透けている。 空がとりわけ青い。 わたしは深呼吸をしてふたたび歩き始める。 昼休みのこと、電話が鳴った。 「yamaokaさん、調布警察署からです」 「ええ、なんだろう。」ちょっとドキドキする。(と言っても調布警察署からは何回か好ましくないことで電話をもらっているが) 「あのう最近、〇〇を落とされませんか?」(この〇〇はちょっと言えない、) 「ええっ、あれ、そうかな、落としたのかしら、」とわたしは、ガサゴソと調べる。 「ええ、落としているようです。」 「それでは身分証明書をもって、警察署までいらしてください」 そうか、落としていたのか、良かった、紛失しなくて。紛失してたらエライことになったぞ。 わたしは胸をなでおろしたのだった。 実は自慢じゃないが、同じようなことが以前にもあって、その時は銀行のキャッシュカードだったのだが、調布警察署から電話を貰って気づいた次第。 本当に、本当に、マヌケなyamaokaである。 しかし、運もいいのかもしれない。 あるいは仙川というこの街が長閑なのかもしれない。 などと甘くおもっていたら、いまにエライ目に遭うぞって戒めている。 が、もって生まれたこのマヌケさはどうにもならないのだ。 新刊紹介をしたい。 四六判変型上製布クロス装帯有り。 388頁 2020年の1月1日から12月31日まで、ふらんす堂のホームページの「俳句日記」に連載されたものを一冊にして刊行。著者の本井英(もとい・えい)氏は、昭和20年(1945)生まれ、慶應義塾高校在学中に、清崎敏郎に師事、俳句を始める。「慶大俳句」を経て、俳誌「玉藻」に入会し、星野立子に師事。俳誌「晴居」(高木晴子主宰)、「惜春」を経て、平成19年(2007)俳誌「夏潮」を創刊主宰。令和元年(2019)大磯鴫立庵二十三世庵主就任。本句集のタイトルはそれに因んだものである。 本書は、日記の部分の文章量が多く、読み応えのある一書となっている。改めて読んでみると、本井英という俳人についてのかなりの情報を得ることができる。小さな頃かなりのやんちゃ坊主だったとか、高校時代はハワイアンバンドに凝っていたとか、バイトでトラックの運転手をしていたとか、どれほど虚子に魅了されているかとか、へえー、こんな歌が好きでいらっしゃるのね、とかとかわたしは大変面白く拝読した。わたしよりも年齢は上でおられるのだが、昭和の景気のよい復興期に青春時代をおくったというところで共通点があるのだろうか、そうじて晴れやかな陽性の気質でおられるように思った。 逗子市の海の近くにお住まいで、釣りをこのまれ日焼けしたスポーツマンタイプで、わたしはひそかに「俳句界の加山雄三」(内緒よ)なんて、思うほど「海の男」というイメージだ。 しかし、ここ数年は健康上、たいへんであった。数年前に、喉頭癌を患い放射線治療を受けて回復をされつつあるその後、前立腺ガンで入院手術、ちょうどこの日記の年である。日記を読んでいくと「手術無事終了。昨日、逗子に戻った」などとあり、ドキッとする。しかし、日記に綴られた文章はすこしも深刻な感じではないのだ。非常に淡々としている。 すこし、抜粋して紹介をしたい。 三月三日(火) 今日は星野立子の忌日。「雛の忌」とも呼ぶ。先生はお年を召してからもハワイなどにいらした。買って帰られたムームーがお気に入りで、鹿野山神野寺での夏行句会などでもお召しになり、私の母などはさらに憧れてしまった。おしゃれな方だっだ。【季題=土筆】 土筆摘むことをことさら好まれし 3月3日はふらんす堂の創立記念日、個人的には星野立子は大好きな俳人である。そうか、おしゃれな方だったのだ。編集者時代にお電話でお話したことがあったけれど、お目にかかる機会を逸してしまった。それがとても残念である。 三月二十五日(水) 虚子の「風流懺法」という小説に一念という小坊主が登場する。比叡山の小坊主のくせに、東京の桜田小学校を出たという設定で、東京弁の「べらんめえ」を操る。こんな眼から鼻へ抜けるような聡明な小坊主を作者の虚子は好きでたまらない。ところが「後日譚」での一念は一転「思い詰めるタイプ」の青年に成長していた。【季題=小鮎】 安曇川のにはかに細し小鮎跳ね 実はわたしもこ「風流懺法」という小説を読んだ。というのは、詩人の杉本徹さんが高く評価しておりすすめてくれたのだった。これまで読んできた小説とはひと味ちがう味わいのあるものだった。 三月二十七日(金) まだ小学生になっていないころ、家に「ワックス」という雌犬がいた。黒っぽい雑種でなんの芸も出来なかった。あるとき、ふと「白」くしてやった方がこの犬のためには良いと考えて、納屋にあった「白ペンキ」を全身に塗ってやった。当然私は𠮟られた筈だが、𠮟られたことは忘れた。私にとっては大切な「雌犬」だった。味は覚えていないが彼女の「おっぱい」も吞んだ。家族は私を変人扱いするが、今でも別に「変わったこと」をしたとは思っていない。【季題=陽炎】 陽炎の記憶の庭の母若し かなりの悪童ぶりである。きっとこの「悪ガキ精神」はいまも脈々と本井英なる俳人の体をながれているのだろう。 八月十九日(水) 六月の初め、後藤比奈夫さんが亡くなった。享年百三。まことに見事な長寿であられた。物理学を専攻なさったことに起因すると思われる独自の視点と斬新な表現により、ある時期以降の「ホトトギス」を代表する作家として、世の耳目を集めた。いな「ある時期」以降、「ホトトギス」の俳句は比奈夫を軸に展開していったのだとする論者もいるほどである。戦後、上野泰・清崎敏郎・湯浅桃邑・深見けん二といった関東の「新人会」の面々とは遠く離れ、同じ関西にあって、波多野爽波ともある距離を保っていた。今後大いに研究されるべき作家であることは間違いない。【季題=花火】 台船のしづかに黒し花火待つ 俳人・後藤比奈夫については、まさに大いに研究されて欲しいとわたしも思う。ここに記されている俳人の方たちのなかでこの時点で唯一生きておられた深見けん二氏がすでに亡くなられたということが悲しい。 令和二年の一年間、ふらんす堂さんのホームページに「俳句日記」を楽しく書かせていただいた。年明け早々から「コロナウイルス」の噂が聞こえはじめ、二月には社会的にさまざまの影響が出始めた。結局、予定されていた東京オリンピックは一年間の延期。他にもありとあらゆるイベントが延期・中止の憂き目を見た。 われわれ俳人の活動も俳句会・吟行会を始め大いに影響を受け、結社の活動も思うに任せない状況であった。そんな中だから、「日記」の内容も勢い不活発になりがちで、過去の出来事の回想に耽ることが少なくなく、さぞお目だるいことであったと思う。しかし一方、なかなか出会えない俳句仲間を念頭に置きながら、昔話を楽しむという側面もあり、筆者は毎日が楽しかった。 「あとがき」より抜粋した。 本句集の装釘は、和兎さん。 この布クロスの青の色がまことに本井英さんらしい、とわたしは思う。 ネイビーブルーといのかしら、明るい晴れやかなブルーである。 これが、濃紺になるとすこし深刻さがあるのだが、そういうことから解放された群青である。 金箔ともよく合っている。 そしてこの花布。 紺と白のツートンは、海辺の定番ファッションであるボーダーのシャツを思わせる。 見返しは白。 扉。 スピンは白。 青と白が織りなす一冊である。 また、やむを得ず病気の話題が多くなってしまい、お読みいただいても楽しくなかったに相違ないと思うが、現在はすっかり治癒して充実した日々を送っている。なお書名「二十三世」は令和元年八月に就任した大磯鴫立庵二十三世 庵主に因んだもの。一年間、心地よい緊張感の中で日々文章を綴り、俳句を詠ませていただいたこと、感謝の気持ちでいっぱいである。(あとがき) 「謹呈 快気祝」として多くの方に贈られた本書である。 もう一日だけ日記を紹介したい。明日の日付になるもの。 十一月二十日(金) 虚子の代表句に「流れ行く大根の葉の早さかな」がある。この句『虚子編 新歳時記』、「大根」の項の例句には出てこない。なぜなら「大根洗ふ」の項の例句として掲げてあるからである。一見冷徹な写生句のように見えながら、この句の背景には「人の暮らし」という要素が欠かせないのである。【季題=鮪】 黒鮪ならではよこの身の赤さ 本書の担当はPさん。本作りだけでなく、ホームページの担当でもあった。 本井先生にはひと月ごとにまとめて御原稿をお送り頂きました。 日記にも記載があるように途中お身体を手術され、心配しておりましたが、順調に快復され『二十三世』を刊行させていただいた際、皆さんにお送りする本には「謹呈」ではなく「快気祝い」という栞を挟んで代送することをご希望されました。 本当に良かったと思います。 装丁は本井先生を連想する「マリンブルー」のクロスで、爽やかな海男のイメージです。 詞書きにも良く出てきますが、先生は歌謡曲などもお好きなんだと思いました。 海をバックに句や歌を口ずさむ本井先生を思い浮かべながら365日楽しく先生の日常を拝見しておりました。 とは、Pさんの感想である。 ネイビーブルーならぬ、マリンブルーか。 なるほど。 本井英さま。 一年間ありがとうございました。 心から感謝を申し上げます。 また、ご快癒をこころよりお祝いをもうしあげます。 ますますのご健吟をお祈りもうしあげております。 充実した野菜畑を通って。
by fragie777
| 2021-11-19 19:06
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Comments(1)
Commented
by
りんりん。
at 2021-11-19 21:11
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おっ皇帝閣下ですね。 明日は知人とダリアを見に行きます。 去年はダリアの天麩羅をいただきました。 追伸 誓子の山嶽の 夏山のホテル備えの月夜傘 が好きです。うろ覚えで間違ってるかも。すみません。
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