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4月8日(水) 花祭り 虚子忌 旧暦2月20日
高濱虚子に敬意を表して。(椿寿忌) わたしの住む地域では、今日は燃えないゴミの回収日。 わたしはたくさんの靴を捨てた。 もう30年くらい履かない靴がシューズクローゼットつまりは下駄箱を整理していたらゾロゾロと出てきたのだ。 おおかた黴がはえてしまっている。 まだ履けそうなものもあったので足をそっと入れてみた。 でもダメ。 30年の間に外反母趾がハバをきかせて足も変形してしまったのだ。 わたしは切ない気持でその靴たちにさよならをしたのだった。 とうとう、東直子著『短歌の不思議』(たんかのふしぎ)が出来上がってきた。 260頁。定価1800円+税 歌人・東直子さんによるはじめての「短歌入門書」である。 ページをめくって読みはじめた。 短歌を作るということは、「五七五七七」の決められた器に言葉を盛り込み、その化学反応でなんらかの世界を築く、言葉の実験の一つだと思います。そんな作品作りのための「準備室」として、短歌に関わる秘訣を模索してゆきたいと思います。 私が現代短歌、それもライトヴァースと呼ばれる作品と出会った時、短歌ってこんなに自由なことができるんだ、という発見がまずうれしかったです。実際に作りはじめてみると、心に浮かんだ言葉、つまり「短歌の素」を書きとめることが楽しくて仕方がなかったのです。本を読んだり、雑事をする合い間に浮かんだフレーズをいつもメモし、夜寝る前には、枕元にノートを一冊置いておきました。夢の怒濤の中で生まれる感情に、自分でも驚いてしまうことがあります。そんな起き抜けの夢の尾を書き取るため、無意識と意識の隙間に言葉を求めようとしていたのですが、ナンノコトヤラなうわごとめいたものも多かったです。言葉を空中に放ったら、次は着地させねばなりません。 と書き出しがあり、次のページをめくるといきなり穴埋め問題が出される。 死ぬまへに を食はむと言ひ出でし大雪の夜の父を怖るる この空白の部分に何が入るでしょうか。 ええっ、とわたしは一瞬ひるみ、そして考えた。 何という言葉がはいるんだろう? 答えはきっと用意されていると思うが、すぐに答えは見たくない。 で、 わたしがふっと浮かんだ答えがこれ。 蛸(たこ) 笑うな。 浮かんじゃったのよ。 この本の担当者であるPさんに「蛸って思ったんだけど、当たってる?」って聞いたら、 「その答えはクソですね」と冷徹に言い放った。 「じゃ、Pさん、あなたはなんと思ったのよ」と聞けば、 「わたしは、鳥かな?って思いました。もちろん違ってましたけど。」 このブログを見ているあなたはいかがですか。 ちょっと考えてみてください。 「短歌」のセンスが問われております。 Pさん曰く、 「答えを知ると、答えの素晴らしさにたじろいじゃいます。いい歌というものがどういうものか、改めて知らされるんです。名歌として残るものはなにか、というその奥義に触れるような気がしました」 そうなのか、いったい何という言葉がはいるんだろう。 ちなみにこの歌は歌人の小池光さんの短歌である。 東さんの文章はこうつづいていく。 死ぬ前に何が食べたい? という会話は、誰もがしたことがあると思います。ここでは、外部から遮断された大雪の夜、まわりを「怖」れさせた、父の食べたかったものを考えてみてください。 短歌の穴埋め問題は、短歌の勉強会でいつも出している課題の一つです。この問題を出した時は、鰻、餅と答えた人が二人、肉、虹、鶴と答えた人が一人ずついました。鰻、餅、肉、といった普通に食べるものならば、順当な発想でしょう。注目したいのは虹と鶴。どちらもおもしろいですが、この場合どちらの答にインパクトがあるでしょうか。虹の方がファンタジックではありますが、食物としての可能性がある鶴の方にどきりとした人が多いのではないかと思います。可能性があるとはいえ、普通の生活の中では鶴を食べようなどとは、誰も思いつきません。そんな発想の隙間(死角)が狙われ、程よい意外性が与えられた点で、言葉の生む化学反応効果が得られているのです。 こののち正解は記されるわけだが、わたしは正解をここで書きません。 興味をもった方は、是非この入門書を買って読んでください。 おどろくべき答えです。 そしてその答えを空白の部分にいれてこの短歌を口ずさむと、この歌がいかに素晴らしいか、 あらためて短歌という詩型の魅力を知らされるのです。 「蛸」と答えたわたしはおのれの凡庸さに、机の下に隠れてしまいたいほど恥じ入りました。 当たった方はもう短歌を作らなくてはいけません。 そのような運命にあると心を定めて短歌の道を邁進してください。 この入門書は、こんなかたちで「穴埋め問題」がたくさんあります。 短歌をつくらない方にも、言葉のセンスをみがく楽しみのある一書です。 帯にこうあります。 「短歌脳になれる一冊!」 さあ、あなたも是非に穴埋め問題にトライしてみてください。 今日はとても寒い一日となった。 野球好きのスタッフの緑さんは、このところの寒さで選手の息が白くなっていると言っていたけど、こんな寒い日に屋外でナイターの試合をする選手もたいへんだ。 しかし、花も嵐も乗り越えて仕事は果たされねばならないのである。 そう、 お互いに。
by fragie777
| 2015-04-08 18:50
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