5月14日(日)
さて、パスポート紛失というおそまつな話について、実は俳人の櫂未知子さんに帰国早々メールで用件のついでに話してしまったところ、「そのパスポートは結局見つかったから、予定通り帰って来られたんでしょう?」と、もっと詳しく教えて欲しいというメールをいただいてしまった。櫂さんは、一人で海外を旅行することもかつてはよくあったということで、「お金が無くなっても、パスポートさえあれば帰って来られる」と、パスポートの管理にはとても神経をいきわたらせているということであった。(普通誰でもそうかもしれない… わたしがずぼらすぎるって、まあそうかも)櫂さんにとってパスポートをなくすなんておよそ信じられないことなんだと思う。
ともかくもヴェネツィアの警察に行って、紛失届をドキドキしながら書き、それは絶対なくしたらいけないとくどいほど言われ、わたしもそのことを自分の胸にたたきこみ、さてそれからである。あとはローマにある日本大使館に行って、「渡航許可書」を貰うかあるいはもう一度新しいパスポートを申請するか、の選択となるわけだが、118ユーロほど費用がかかるが新しいパスポートをつくることにした。といっても、予定はヴェネツィアのあとフィレンツェを観光してからローマに行くことになる。ローマには3泊する予定であるので、すぐに申請に行けば帰国の日までなんとか新しいパスポートを手にすることが出来るであろうということを言われ、私は大きくうなづき、そうして自分がパスポートを紛失した人間であることを忘れて、ヴェネツィアとフィレンツェの観光を心から楽しんだのである。櫂さん、どうですか? この私の呑気ぶりは…。結局、ローマではサンピエトロ寺院の観光は止めて、日本大使館にタクシーをとばし(イタリアのタクシー運転手はすごい! 高速でもないの130キロくらいとばす。いくら急いでいるからって、ほ、ほんとに怖かった)大使館ちかくの写真屋さんで写真もとってもらい(そこはデジカメで撮影する!)大使館の門番のきびしい検閲を受け、どうにか大使館の扉をあけてそこで沢山の書類を書かされ、ながーい時間を待って、やっと申請を許可され明日とりに来なさいということになった。良かった!!これで帰れる。翌日ふたたびタクシーをとばし、こんどは検閲も顔みしりということですいすいと(なにがすいすいですか)なかにいれてもらい途中日本大使館で飼われている猫のみいちゃんに声をかけたりして、窓口で118ユーロを支払い、新しいパスポートを手にいれた。ヤッター。
新しいパスポートはICチップが入っていて紛失してもその紛失先をおいかけることができるのだという。写真もまあそれなりにおさまっていて、なにより交付官庁のところに「在伊大」と書かれている。同行の人たちに「どうよ」って自慢そうに見せたら、ほんとうにあきれられてしまった。「懲りないヤツだ」ときっと思ったんだ。ローマでは130キロのぶっ飛ばしタクシーに乗って、日本大使館に行くという味付けが加わり、ああ、本当に忘れられない旅行となった。仕合わせなことに(仕合わせではないかもしれないが)私は旅行期間中、パスポートをなくしてしまったことについてきっとどうにかなるときわめて楽観的であったのだが、日本に戻って、どうやらそれは論外ということらしく、あらためて自分の「危機意識の欠落」を心底反省した、というよりもしなくてはいけないと自身に言い聞かせている。
イタリアのタクシーについて、確かに130キロは怖かったが、車体はおんぼろでもタイヤはものすごく良いものを使っているようだ。だから飛ばしても、車体が地面にすいついているように走るのだ。カーブを曲るときに確認した速度が130キロだから直線ではもっと出ていたかもしれない。ああ、ブルブル…
写真はヴェネツィアの風景。ヴェネツィアというところはそこにいる時よりも、帰ってきてこうして写真で見たときのほうが、「ああ、ヴェネツィア!」と感動するところである。