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5月23日(木)
わたしの好きな木だ。 わが家の庭にある木だが、これは二代目。かつて雨のふらない年に枯らしてしまい、どうしても令法が欲しくて植木屋さんに頼んで植えてもらったのだ。 独特な木の姿でこれも株立ちが美しい。 アオハダの木に向き合うかたちで立っており、わたしはほぼ毎日このアオハダと令法の間をぬって新聞受けに新聞を取りに行く。 (なんども言いますが、我が家の庭は歩いて5歩の雑木林なのです) 夕方仕事をしていてみんなお腹がすいてきた。 スタッフのPさんがやおら立ち上がりみんなにお煎餅を配り出した。 「発芽玄米煎餅」と書かれた煎餅の箱をもって。 この発芽玄米煎餅には、「マヨネーズ味」と「白醤油味」と「サラダ味」の三種類があってどれも美味い。 実はこの「発芽玄米煎餅」は、今年のお年玉付き年賀はがきの抽選で三等賞をもらったその景品なのである。いくつかのチョイスがあったのであるが、スタッフの全員一致で「発芽玄米煎餅」を貰おうということになったのだった。 こうやって小腹がすいたときにわたしたちの飢えを満たしてくれているのだ。 どれも美味いが「白醤油味がいちばん人気です」と愛さん。 新刊句集を紹介したい。 岩澤静枝句集『楡』(にれ)。 著者の岩澤静枝さんは、俳誌「泉」(綾部仁喜主宰)の同人。俳句をはじめられた時の状況を知っていささか驚いた。 昭和六三年に脳梗塞をわずらい、以後呂律も回らず、満足に字も書けない私を俳句と詩吟に誘って下ったのが友人の鈴木キクヱさんです。その後「泉」に入会、三年半ほどで病も快復、現在に至っております。 「あとがき」の言葉である。大正15年(1926年)のお生まれだから脳梗塞になられたのが62歳、それから闘病をしながらの俳句作りである。そうして俳句を作り続け来年米寿を迎えようとされる岩澤さんの第一句集だ。感慨もひとしおのことであると思う。 タイトルの「楡」であるが、「楡」という気のイメージは一本で立つ大きな木というイメージがある。集中にもかなり出てくる。 楡の木に八月の雲かかりけり 楡の木の風のゆき交ふかき氷 楡の木におもかげひとつ夏帽子 楡の木と春を惜しみてをりにけり 著者の身近にある木なのだろうか。この「楡」についての説明はない。しかし、あるいはこの楡の木は岩澤さんの分身なのかもしれない。 本書の著者岩澤静枝さんは、俳句が大好きな女性である。(略)、本書、句集『楡』であるが、俳句大好きな岩澤静枝さんの一書である。わたくしは、たまたま撰を頼まれたが、作品の文学的評価よりも、上記の静枝さんの人間的持ち味を中心に、わたくし勝手の選びかたで抽き出させていただいた。 綾部仁喜主宰の序文である。「人間的持ち味を中心に」と書かれているようにこの句集を読めば、岩澤静枝という人の明るい大らかさに触れ後味のよい読後感につつまれるのだ。 60歳をすぎてからはじめられたという俳句であるが、作品は病気を経たあととは思えないほど前向きで陰湿さのかけらもない。それがとてもいい。 つばくらの腹かへしゆく庇かな お見合をすすめられをり梅雨の蝶 一人酒雨の端午を祝ひけり 一人もの同士の和菓子ちちろ虫 わが恋に三色すみれさかりかな わが恋の終りし年の詰りけり 流燈のちちははの声遠ざかる ものの芽の一つ一つに声あげて 豆を撒くひとりの声をはりあげて 一湾を裏返したる嚔かな 鶏頭の首の太さの門に立つ 一代のかぎりの墓を洗ひけり 降誕祭ははに逢ひたくなりにけり 更衣してあてもなき一日かな 大杯を好みて屠蘇を祝ひけり どこまでも手を繫ぎゆく秋の草 朗々と詩吟流るる辛夷かな 朝の雪傘寿の祝ひ届きけり 箒目をしかとつけたる二月かな 二匹飼ふおたまじやくしに足の出て 読み初めは佐藤春夫の詩集かな 獅子舞の後につきゆく猫だいて 豆撒きの声を張りたる星の数 おそらく岩澤さんはお一人住まいである。父母もなく夫もなく子どももいない。しかし、この人の人生はどうだろう。二匹のおたまじゃくしを育て、佐藤春夫の詩を読み初めとし、獅子舞いには猫を抱いてついてゆくおばあさまである。そしてお酒を呑むことを好みお正月には大きなさかづきで杯を干す。一人の暮らしであっても豆まきには大きな声をはりあげて豆をまく。人生への素晴らしい向き合い方だ。気持ちが晴れ晴れとしてくるようだ。 この句集の担当はPさん。 「お目にかかったときに明るいオーラにつつまれて、華のある素敵なお方でした」と。 わたしにとっても好感度抜群である。 だって、すこし酔っ払って猫を抱いて獅子舞いのあとをついていくご婦人なんてそりゃ、good だわ。わたしもそういうおばあちゃんになりたいな……。ヤマトと日向子を両手にだいて、ほりゃほりゃって獅子舞いのあとをついて行く……。獅子舞いじゃなくってイケメンだっていいけどさ……。 イカン、イカン、句集に話を戻そう。 いまは亡き師・石田勝彦より懇切なる指導を賜ったということも序文にある。 好まれし港の丘や雲の峰 (悼む勝彦先生) 勝彦忌鬼灯市に来てをりぬ 勝彦の座りし岩や秋燕 わたしも大変お世話になった石田勝彦先生のことをふたたび思い出しながら読み進んだのだった。 わたしの好きな句はこれ。 被災地の焼酎二本買ひにけり こういう被災地への悼み方というのもある。 ただ、それだけのこと、と言うなかれ。 わたしにはぐっとくる。 (酒飲みだから? ……んなこと言うなかれ)
by fragie777
| 2013-05-23 20:43
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