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12月14日(金)
わたし自身も忘れていたトアル理由で、F先生の奥さまのT子夫人が贈ってくださったものだ。 このわたくしメ、そのトアル理由に気づいて感激しちまった。 クリスマスツリーを象ったキラキラ光るブローチも入っていてこればクリスマスの日につけるようにとご指示がある。 おまかせください。 クリスマスの日にきっと付けます。 お昼にまたまたわたし宛のものが届いた。 これもトアル理由だ。 ずっと欲しかったDVDである。 こっちはかつてトマトのように真っ赤なほっぺをしていた女子からだ。 女優のドミニク・サンダがとてつもなくいい。 ゾクゾクするような甘美さと人間の醜悪さがただよう映画だ。 (正直、すげー、嬉しい。) 新刊句集を紹介したい。 この句集は先日、ある会の帰り道にお目にかかった川名大さんが「面白い句集ですね」とおっしゃっていたものだ。「装丁もいいですね」って。 『木之下のの句集』(きのしたののくしゅう)。 句集名は『木の下のの句集』とのみ。ことさらな句集名はない。 しかし面白い句集だ。 一ページ一句組で150ページだから、句数は130句ほどか。著者の木の下ののさんは、俳誌「鷹」、「梟」を経て、いまは無所属である。句歴は長いようだが、かなり厳選をされた第1句集だ。 芸大の音楽部を卒業と略歴にあるので楽器を演奏されるかもしれない。 手を入れて磨くチユーバや夏は来ぬ という句がはじめの方にあるので、あるいはチューバを演奏されるのかもしれない。 この句集は不思議な面白さがある。 句集を読みとおすと著者の破天荒な生き生きとした人物像が立ち上がってくるのだ。 読み手を適度に楽しませながら一気に読ませてしまう句集である。おしつけがましさがなくスマートでさえもある。 白靴の一点汚れ不眠症 老人の楽団が着く海開 週末や美しき蛾を肩に置き 虫干の河童の皿のごときもの あをあをとあり母衣(ほろ)蚊帳と歳月と 金雀枝よ空飛ぶ人はきつとゐる 夏雲や父の時計をわれが巻く 台風や卓にただあるセメダイン すさまじく太鼓の皮の匂ひけり 三十三才レコード針が大事なり 指組めば神あるごとし冬林檎 隼人なり鶏冠ぶちこむ薩摩汁 初春や鉄腕アトム老いもせで 出かけるぞ恵方いづこか知らねども 鳥雲に入る風呂敷が見つからぬ 哲学を畏れ栄螺を敬すなり 春の夢駱駝がドアを叩きけり 私小説愛す壺焼沸騰す 煮えあがる肉の全貌春の宵 行く春の兎座の尾へ帰るなり 著者の木の下ののさんは、1947年生まれとあるから60代半ばか。しかし現れて来るのは、なかなか型破りで平然としたスケールの大きな女人の風貌だ。日常の些事にとらわれない芸術家然とした面持ちとでも言ったらいいのだろうか。 読んでいてこちらの心が広やかになってくるような気分になる。 俳句が好きになったのは、民族音楽学者の小泉文夫先生のお蔭と思っている。日本音楽の基礎的な理論としての音数律の授業がたまらなくおもしろかった。ピアノの練習も対位法の課題も放りだして、音数律―言葉のリズムの資料をさがしまわった。時を経て俳句にたどりつくことができたのは実に仕合せなことであった。 俳句を始めてからは「鷹」の藤田湘子先生、また「梟」の矢島渚男先生に懇切なご指導をたまわった。これもたいへん仕合せなことであった。二先生に心よりの感謝を申し上げたい。ここに載せた句は二〇〇七年までの約十年間に作ったもので、「鷹」および「梟」に発表したものがほとんどである。 「あとがき」の言葉である。 この句集さらに読者を笑わせてくれる。 草笛が吹けていまだに不良なり かなかなや頑丈過ぎる身が不安 夕焼やわれの焦せし鍋いくつ 秋燕やいまもなりたき相撲取 光り輝くパチンコ店へ冬帽子 つばくらめわたしはラジオ体操中 あたたかし辞書も頭脳も劣化して この大らかさはどうだろう。 こういう女性だったら一緒に暮してもいいかも……、とも思ってしまう。けっこう面白いんじゃないかって。 こんな風に笑わせながらも、季語の配し方がいい、季語がとても生き生きとしている。 さて、この句集は木の下ののさんの美的センスを証明するかのようにとてもスマートに仕上がった。 一句組を活かして本を細長くしたのが良かった。 装丁は君嶋真理子さん。 担当は愛さん。大笑いしながら好きな句を教えてくれた。 蘆の角わが怪力を誰も知らず 「怪力」ってどんな……。 「蘆の角」がいい。 本当に一度ぜひにお会いしたい方だ。 お住まいは岡山県、お目にかかれないのがとっても残念である。
by fragie777
| 2012-12-14 20:00
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