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9月17日(月)
厳しい残暑のなか、わたしの髪の毛はまるで収集のつかないおもちゃ箱のようにあっちに飛び出しこっちに飛び出しひどい様を呈していたので、今日はひさしぶりに美容院に行った。いつものようにシャンプーをしてもらったあとに鏡の前にすわったわたしに「今日はどうします」と美容師のAさんがいうので、「おまかせします」と言ってあとはつかれてしまったのか、ほぼこっくりこっくりと夢の状態のなかで心地よい鋏の音を聴いていた。Aさんのカットさばきはそれはもう細やかでしなやかですばやくて名人芸だなあ……といつもながらほれぼれする。 ほぼ一時間以上が経ちカットは終了した。 「さっ、これでどうでしょう!」といつものように大きな手鏡(とはいえない鏡)を持ってきてわたしの髪型を右横から左横からそして後ろから角度をかえて見せてくれる。 「ああ、いいですね。」とわたしは言い、横顔の耳から頬へかけてのシャープなラインに満足したのだった。 するとAさんは、 「今日はうしろをへの字にしてあります」と言う。 「?????」という顔をするとふたたび鏡をうしろにあててわたしの後ろを映し、この角度がね、への字でしょう?!」と言う。 「ああ、確かに」 「最初Vにしたんですけど、yamaokaさんの髪の質がそれだとヘンな形になっちゃうんですよね。だからへの字しました。」 「へ」の字がいいのか悪いのかわからないまま、「ああ、そうですか」とわたしはいい、全体的にはまずまずだなと総括したのだった。 その後すぐに友人がやっている洋服のセレクトショップに行ったところ、「あら、可愛いわねえ。いいじゃないその髪型」と言われ、そこにいた別の友人からも「いいですね」と言われ、気をよくしたわたしは、これはおまけと後ろを向いて「へ」の字を披露したのだった。 「あら、確かにへの字!」と感嘆(?)している。 いったい、 この地球上にうしろの髪型が「へ」という人間が何人いるだろうか…… これから中年女性の後ろの髪型を注意していただきたい。 「へ」を描いている人間がいたら、それはまぎれもなくyamaokaだと思うのだ、 きっと……。 声をかけないで欲しい。 今日の「増殖する歳時記」は、清水哲男さんによって嘴朋子句集『象の耳』より。 引越の箪笥が触るる秋の雲 家屋の構造にもよるけれど、箪笥(たんす)はたいていが、あまり日の当たらない部屋の奥などに置かれている。それが引越しともなると、いきなり白日の下に引き出されて、それだけでもどこか新鮮な感じを受ける。句の箪笥はしかも、たぶんトラックの荷台に乗せられているのだろう。日常的にはそんなに高い位置の箪笥を見ることはないので、ますます箪笥の存在感が極まって見えてくる。その様子を作者は、秋雲に触れている(ようだ)と捉えたわけだが、この表現もまた、箪笥の輪郭をよりいっそう際立たせていて納得できる。その昔、若き日のポランスキーが撮った『タンスと二人の男』という短編映画があった。ストーリーらしきストーリーもない映画で、二人の男がタンスをかついで海岸や街中をうろうろするというだけのものだった。ふだんは家の奥に鎮座しているものが表に出てくるだけで、はっとするような刺激を与えるという意味では、掲句も同じである。なんでもない引越し風景も、見る人によってはかくのごとき感覚で味わうことができるのだ。あやかりたい。『象の耳』(2012)所収。 この句集『象の耳』はまだ出来上がったばかりの一冊である。このブログでも紹介していない。早々の反響がうれしい。 週刊俳句 Haiku Weeklyでは、西原天気さんが、津川絵理子句集『はじまりの樹』について鑑賞している。 ほかに、小野裕樹さんによって「「関心空間」」で、また青山茂根さんによって「「haiku&me」」で、金子敦さんの句集『乗船券』が、それぞれ取り上げられている。 新刊紹介がだいぶたまってしまった。 今週はせっせと新刊紹介をいたします。
by fragie777
| 2012-09-17 21:21
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Comments(2)
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