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7月2日(月)
こちらは雨に濡れたほう。 先週に引き続いて、「川崎展宏全句集」の「季語別索引」つくりのための季語検索をしている。そこで、 「滑り下駄(すべりげた)」 という季語が出てきた。 売れもせず赤い鼻緒の滑り下駄 という第一句集『葛の葉』に収められている作品のものだ。講談社版の「大歳時記」にはこの季題は載っていない。下駄は下駄でも普通の下駄でないことは分かる。だって季語なんだから。わたしは目の前のスタッフの愛さんに尋ねた。(こういう時、物知りの愛さんは何でも知っているのだ。) 「すべりげた?ですか。聞いたことないですねえ」と愛さん。 手もとにある他の歳時記などを当たってみていると、愛さんが、 「yamaokaさん、ありました! スケートをするため下駄らしいですよ」って言いながら、インターネットで調べた写真をみせてくれた。それが、これ。 「滑り下駄」 今年もすべり下駄の世界、大会を2月19日(日)米沢スキー場の特設コースで開催します。すべり下駄ってどうゆう下駄かしつてますか???????????写真おご覧いただくと分かりますが裏に竹が張ってあるんです。50歳代、から上の女性が子供のころ雪が降ると外遊びで使った物なんです。 ある方のブログでこんな風に紹介されていた。ずい分きれいなものだ。確かに「赤い鼻緒」である。 この季語をご存知でした? 「滑り下駄」。 言われてみれば、言葉が意味するとおりのものであったわけである。 新刊句集を紹介したい。 植松紫魚句集『冬の犬』(ふゆのいぬ)。 著者の植松紫魚(うえまつ・しぎょ)さんは、俳誌「嵯峨野」に所属する俳人である。この度の句集は第一句集『海流』、第二句集『地平』に続く第三句集となる。三句集もふらんす堂で刊行させていただきながら、わたしたちは著者の植松さんにお目にかかったことはない。静かな俳句の世界をとおしてかすかに著者の生活を知る、そんな関わり方で句集をつくらせていただいてきた。お医者さまであることは、その略歴から知ってはいたが、作品ではそのことは分からない。 この度の句集名は「冬の犬」。いままでとちょっと趣がちがう。「冬の犬」というイメージからは少し厳しい暗い雰囲気がただよう。担当の愛さんに聞いてみた。 「このタイトルの俳句はあるの?」「あります」という答え。いったいどんな作品なのだろう。わたしは楽しみにして読みすすむことにした。 この本は平成十八年以降ほぼ六年間の句をまとめたものである。その間には私にとって人生の節目ともいうべき出来事がいくつかあり、句の上にもあるていど反映されていると思う。昨年は三陸沖を震源とする大震災の年であった。私はかつて宮城県内で十年余りにわたって暮らしていた。その折にたびたび行ってみた付近の海岸の美しさは、今でもつよく印象に残っている。この地域は津波の害をまともに受け、私はテレビや新聞の報道を茫然と眺めるだけであった。被災地を訪れたのは地震発生からしばらくたってからのことである。そしてあらためて被害のひどさを実感した。地震や津波のことを句にするのは憚られる気持もあったが、自分なりに何か詠んでおくべきであると思いなおし、ここにもいくつかの句を収録した。 「六年間の作品をまとめたものである」ということ、そして震災後のかつて暮らした場所をたずねてそれを俳句に詠みこの句集におさめているということだ。 「津波被災地にて 八句」と前書きがあるうちよりいくつか紹介したい。 泥海の底の底より蘆の角 残骸のセスナ荒涼藤の花 梅雨寒き曠野やに置かれぬひぐるみ 毀(こぼ)れ家にうからつどひぬ四十雀 植松紫魚さんの句の世界は淡々とした静謐さをまとっている。お会いしたことはないが、ご本人ももの静かなお方であろう。「あとがき」に「私にとって人生の節目ともいうべき出来事がいくつかありそれが句の上にもある程度反映されている」とある。(へえー、そうなんだ)と作品を読みすすんでいく。 青空がひさびさに見えチユーリツプ 青薄子供らは息きらしたる ペンの字もしづかに燃ゆる焚火かな 海底(うなそこ)を照らす日ざしや春隣 目のまへに湖あるごとし青田植う 夏山や翠のどこかかなしめる しつかりと抑へし帽子母子草 黒南風に川の匂ひもまざりけり にぎやかな声の方からしやぼん玉 新涼の妻まだ着かぬ座敷かな はたはたの飛んで失ふゆくへかな 身重なる妻といゆきし枯野かな 世に出でし命二つや冬あたたか みどり児に初めての雪降りてやむ いつもより片付いてゐる雛の家 はこべらや乳をほしがるちごの声 大げさにゆれし電車や花曇 秋なすび遠出の児らがよく笑ひ 児の声に節ついてをり日脚伸ぶ 「人生の節目というべき出来事」ってきっとこれだ。「ねえ、愛さん、植松さんご結婚なさったのよ、そしてお子さんができて、しかも双子かも……」「あれー、そうですねえ。すばらしい」。作品の世界に人影がくっきりと現れてきて、植松紫魚さんのあたたかな眼差しとすこし弾むような心を感じる。そして「冬の犬」の作品を見つけた。 みどり児は見つめるばかり冬の犬 決して暗い作品ではなかった。みどり児に見つめられて「冬の犬」に命の温もりが加わった。植松さんが「冬の犬」とした所以がよくわかった。思いのこめられた句集名なのだ。 しかし、この著者はなかなかその人間像を結びにくい。句集はあくまで作品であるので、そこで己自身を特に語らなくてはいけないということはないのだが、どうしても読んでいるとその人の像を求めてしまう。著者と出合いたいと思う。以下の三句は数少ない植松さん像だ。 わすれ物とりにゆく駅初しぐれ 麦酒まづ一口呑んで椅子引きぬ 話しだす前の緊張青葡萄 あらまあ、立派なお医者さまでも「わすれ物」をなさったり、緊張なさったりするんですねえ、とわたしはホッとする。 担当の愛さんの好きな句は、 尾花よりそびゆる紺や真狩岳 「どうしても北海道の郷里の句を選んでしまいます」と。「真狩岳(まっかりだけ)」はご実家のお隣の町にある山であり、演歌歌手の細川ただしの出身地であるということだ。 しはぶきて何かひとつのこと忘れ ひょっとしてこれってわたしのこと詠んでるんじゃない。と思うくらい思い当たるふしがある。しかし、別にしわぶかなくても忘れます。 この句集の装丁は和兎さん。 第一、第二につづき、フランス装の本である。 時折は外を見やりて春を待つ 掉尾に置かれた句である。 「冬の犬」とともに「春を待つ」心が実感させられる一冊である。 昨夜の「欧州選手権決勝」、もちろんサッカーのね、観ました? わたしは見なかったけれど、わたしのまわりでは、観ていた人間が結構いる。 スタッフのPさんは、ドイツを応援していたが、(好きな選手がいるらしい)、わたしはドイツではなくてラテン系の国を応援していた。だからさ、スペインとかイタリアとかフランスとか、そして優勝はスペイン。凄いね。 Pさんはこれを見るために早く寝て夜中に起きて明け方まで観たという。 まったくよくやるわよ。
by fragie777
| 2012-07-02 19:21
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Comments(2)
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