カテゴリ
以前の記事
最新のコメント
検索
画像一覧
|
3月16日(金)
今日こそは自転車で通勤しようって決めて玄関ドアーを開けたはずであった。 自転車にキーを差し込んで、180秒ほどわたしの心は春寒の空をさまよい、おもむろに自転車のキーをはずし、バッグの中に放りこむや車のキーをガサゴソと取り出し、(ヘタレなわたし)に10秒ほど悪態をつきあとはガンガンに音楽を聞いて快適に車を走らせた。 春光が眩しかった。 途中で前の車が急に変則的に止まったので、それを追い抜くときに運転しているおばさんに(何やってんのよお!)って心の中で毒づきながらガンをとばして、まっ威勢よく出社したというわけである。 仕事をしていたら机の上に一本の髪の毛が落ちていた。 あら、わたしの髪の毛。 それを見ると、なんと先っぽは白髪であるが、根元に行くにつれて茶色になっている。(わたしは髪が茶色なのね)さっそく近くにいたPさんをつかまえてこう言った。 「見て、凄いでしょ。白髪が黒を取り戻してるんだから……」 すると、Pさん(わけわかんない)っていう顔をして、あとは無視だ……。 な、なんなのよっ。 いったいこれは凄いことなんだろうか、それとも全然凄くないことなんだろうか、 よくわからん。 新刊句集を紹介したい。 丸山分水句集『守門(すもん)』 。 前句集『國上(くがみ)』 につづく第二句集となる。著者の丸山分水さんは、俳誌「天頂」「泉」「古志」所属、帯には「天頂」主宰の波戸岡旭氏が言葉を寄せている。 「第一句集『國上』と同じような造本で響きあうものを。」 というのが著者の丸山分水さんのたつてのご意向だった。装丁は前回と同じく君嶋真理子さん。 丸山さんは本づくりにはっきりとしたご希望をもっておられた。わたしたちはそのご希望にそうべく本づくりを進めたのだった。 第一句集のテーマカラーは「青」、第二句集のテーマカラーは「緑」、句集名の「國上」「守門」は、故郷の新潟にある山の名前である。趣味のいいこだわりを持っておられる丸山氏だが、問題は時勢の移り変わりの激しさである。「前と同じように」という著者の希望に応えられるように、前回と同じものがすべて取り揃っているかどうか、たとえば用紙一つとっても最近は特殊紙の廃版がつづき、いい紙がどんどん無くなっている。印刷形態ひとつとってもそうである。 事実、活版印刷の過程で印刷屋さんが廃業してしまい、組まれてものを印刷してくれるところをわたしたちは必死になって探したのだった。探してはみたものの、印刷がきれいでなく何度もやり直してもらうなど生みの苦しみをした句集『守門』となったのだった。 それゆえ出来上がったときの感慨はひとしおだった。 担当スタッフは愛さん。「yamaokaさん、困りました」っていうことばを何度聞いたことか……。ふたりで頭をかかえながら、辛抱強く出来上がりをまっていてくださる丸山さんの願いにこたえるべくけっこう必死だった。 その出来上がりである。 この背継表紙も、いまは職人さんが消えつつある。 てまひまがかかる表紙なのだ。 そして活版印刷。 活版印刷の文字はなんとも言えない独特な風合いだ。 この写真ではわからないが、版面(はんづら)がきっちりと揃っていて、活版印刷はその紙面を見ていても気持ちがいい。 句づくりについては、「俳句に意味を込めてはいけない。俳句は非合理。割り切れないからいいのだ。はからいなどせず自分を空しうして、向こう側からそのままいただくように」という森澄雄の真似はとてもできないが、なるべく句には意味を込めないようにし、口をついて出てきた言葉そのままを写し取るようにしている。 あとがきのことばだ。 皿にみなサランラップの良夜かな 葛の花山に押し入る湖西線 自転車が来て声かくる青田かな 梅の花姉さん被り出てこられ 掛け大根越しに子どもの叱らるる 板一枚渡してありぬ春の土 ゆつたりと川たわみゆく桜かな 山藤のこぞり立ちたる月あかり 暮れがての声の涼しき雀かな 扇風機阿弥陀様へは向いてゐず 天の川ほどなく海といふ河口 隣家の柿の夕映もらひけり あらたまの涼しき国へゆく葉書 甘茶仏大きな余震続けざま 虫の夜のしのつく雨となりにけり 著者丸山分水がいま苦闘しつつ求めつづけている更なるものは、(略)平明な句境の、その先に開けてくるような予感を覚える。 波戸岡旭氏の帯文のことばである。 「本の出来上がりに満足しております」。 という丸山分水さんのことばが何より嬉しかった。
by fragie777
| 2012-03-16 20:54
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||