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11月12日(土)
よく晴れた日となった。 今日は吉祥寺にある成蹊大学まで行かなくてはならない。 中村草田男の句碑の除幕式があるのだ。 成蹊学園創立100周年の記念行事として草田男の句碑が建立されたのだ。 除幕式をとりおこなうには申し分のない青空である。 除幕式のあとは記念講演がある。 草田男の三女でフランス文学者の中村弓子氏と歌人の佐佐木幸綱氏のおふたりの講演である。 どちらも成蹊学園(高校まで)のОBである。 草田男はこの成蹊学園で国語の教師だった。 後ろにあるのが図書館であるらしいが、ようく中を見てほしい。宇宙ステーションのようなカプセルが3個宙に浮いたかたちになっていて、ちょっと不思議な光景である。しばらく目が離せなかった。どうやら聞くところによると閲覧室らしい。 今の大学って凄すぎる……。 (帰りに探索したいと思ったのだが残念ながらその時間は無かった……) 空は太初の青さ妻より林檎受く 昭和二十一年の作だ。『来し方行方』収録。 「居所を失ふところとなり、勤め先の学校の寮の一室に家族と共に生活す」という前書きがある。この「学校」が成蹊学園なのである。 戦後の荒廃の地に立った草田男にとって空の青さも林檎の瑞々しい赤さも格別だっただろう。 除幕式では、俳人の鍵和田ゆう子氏と三女の中村弓子氏が挨拶をされた。 鍵和田氏は、この俳句について「すべてを失ったが故に宿っている明るさがある。今年は震災という大きな悲しみを経験したわけだが、震災によって傷つけられた心に明るさをもたらすものであって欲しい」と挨拶をされた。 中村弓子氏もまた、「成蹊学園の創立百周年を祝うと同時に、ここを通る人々の大震災で傷ついた心に明るさをもたらすものとなるよう心から祈っております。」とご挨拶されたのだった。。 俳誌「未来図」の俳人の方々も参列されたいた。編集長の守屋明俊さん、山田真砂年さん、角谷昌子さんなどにお目にかかった。 三女の弓子さんと教え子の佐佐木幸綱さんのお話で興味深かったのは、草田男の教師の顔と俳人としての顔の違いである。 国語教師としての草田男は刑事コロンボのようなコートを着て地味な存在で、ひたすらその知識を生徒に伝達するという先生で、早弁があったりエスケープがあったりの授業風景であったらしい。 (そんな有名な俳句の先生であるとは……)ということだった。 俳人としての草田男は激しい面を見せ、人との論争もいとわず、家でもつねに俳句のことを食卓の話題にしていたということだ。 面白かったのは、「草田男」という名前の由来だ。これは中村弓子さんのお話だ。 「おまえは腐ったようなヤツだ」と言われ、「くさたお(腐った男)」と付けたというのだ。 それには心底びっくりした。有名な話しなのかもしれないが、わたしは初めて知った。 しかし、この草田男にはもうひとつの意味がある。「そうでんおとこ(そうでないおとこ)」つまり「そう腐った男ではない」という意味である。訓読みでは「腐った男」、音読みでは「そうでんおとこ」。 こんな意味があったとは。 草田男という人間がふくらんでくる。 茶目っ気のあるお人だったのかもしれない。 このように相手の雑言をかくも平然と俳号にしてしまうとは、やっぱり草田男はただもんじゃない…… やるなあ……草田男。 講演会のあとの懇親会に出て、成蹊大学キャンパスを後にするころにはすっかり暗くなってしまっていた。 今日除幕式に参列させてもらってつくづくと思ったことは、中村草田男精選句集『炎熱』(横澤放川編)を刊行できて良かったということだ。 別に褒められたわけではないけど、今日の式と講演で草田男の俳句に触れその人となりが語られ、ぐっとこうその存在が近くなるような思いがし、すぐそばに草田男がいるように思えた。やはり作家はその作品と共に生きるのだ。読まれてなくてはいけない。 句集『炎熱』には、草田男の代表作が網羅されている。編集作業をしながら、やはりすごい俳人だと思った。「万緑」という結社を越えて、読まれていかなくてはいけない。 この小さな句集が多くの人の手にわたり何度も読まれることをわたしは望んでいる。 ↑ どう、編集者らしいと思わない? たまにはね……。
by fragie777
| 2011-11-12 20:27
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Comments(2)
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