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11月11日(金)
これってまったくのにわか知識なんだけど、地球上には1000万種以上の生物が生息していて、人間が知っているのはわずか150万~170万種余り。昆虫が95万種、植物が28万種あり、脊椎動物では魚類が2万8000種、わたしたち哺乳類は5400種にすぎないという。 そうして生物はひとつひとつに個性があり、直接的あるいは間接的に支え合って生きているわけで、そういうさまざまな生物の豊かな個性とつながりのことを「生物多様性」と言うんだそうだ。←ほぼここまではものの本をほとんどそのまま引用したんだけど、実際のところわたしなど、そう言われたってこれらの数にいまひとつ現実感がない。「人間が知っているのは」とあってもいったいどこの人間よ? わたし150万種なんて知らないぞ、ってわたしという人間の個性は叫びんでしまう。つまりは地球上はものすごい数の個性ある生物でひしめいているという訳だ。そう考えるとなんだかそのおびただしい個性の数についてゆけず頭がクラクラしてくる。 しかし絶滅に瀕している生物たちも多いという。2011年から2020年までは「国連生物多様性の10年」ということで、「生物多様性」というありようを意識化して種の再生をはかり豊かに共存していこうということだ。と書かれている。 だから、わたしという個性はご近所のおばさんという個性ともタバコを止めなさいっていっても聞かない個性ともあるいはゴミ袋をつつきにやってくる烏の個性とも円滑につきあわなくてはいけないわけだ。 でも、これってあまりにも卑近な読みだよな……まっ、いいかっ。 新刊紹介しようとおもっていたら大事な電話がたてつづけに3本入り、手間取ってしまった。 お腹もすいてきてしまったことだが、丹田に力をいれて新刊紹介をしたい。 石橋万寿句集『飛天の笛』。 俳句をはじめてから23年目の第一句集である。著者の石橋万寿さんは、江國滋さんの下で俳句を学び、江國氏亡きあとは、鷹羽狩行氏の指導する俳誌「狩」(鷹羽狩行主宰)で俳句を学んでいる。 かりがねの声を飛天の笛かとも よりの句集名だ。鷹羽狩行主宰は、帯文と「鑑賞七句」を寄せている。いくつか紹介したい。 種蒔けば土が花の名問ふごとし 種を蒔くと、土から何の花かとたずねられたような気がした。 ものの芽の力溜めゐる尖りかな まだ何の花のものともしれぬ芽を見て、その尖りを見事な花を咲かせるために力を溜めていると把握したところが独得。〈甘草の芽のとびとびのひとならび 素十〉の客観写生に対して、この句は内面的にとらえたものの芽。 駆けてゆく子らよ花野の花となれ 秋の野原。子供たちは広々とした「花野」の沖をめざして風のように走ってゆく。その楽しそうな様子を見て、思わず「花野の花となれ」と思った。何かメルヘンの世界のような趣があり、可憐さに心のあたたまる一句。 一読して、わたしは上手い作家だと思った。表現に無理がなくてしかも余情がある。この著者の日常を掬って俳句に仕立てるその掬い方がわたしは好きかもしれない……と思った。とりたててどうということもない日常を力まずに俳句に仕立てる、その技がすっきりしている。句をあげるとキリがないほどいいと思った句が多い、が、いくつかを選んでみると、 竹馬の一歩ふみだすところかな うたた寝の背に着せ掛けて夜の秋 人波の上に真白き破魔矢かな 頂上をすこし貰ひて搔氷 木犀の香につつまれし逢瀬かな イタリアのやうなブーツで落葉踏む 着こなしのそのひとらしき薄ごろも 白きまま花の閉ぢたる酔芙蓉 (江國滋酔郎先生を悼みて) 花栗の香やジーパンをたたき干す 螢籠あづけて鼻緒なほしけり 年の湯や目つむりて知る身の疲れ 石けりの石もち帰る春の暮 文机をきれいに拭きて月を待つ 釣り上げて鮎水よりもつめたかり 煮ふくめてゐるものの香や春の雪 一帖の封切れば海苔ふくらみぬ 冬欅梢は星を掃くごとし 子をひとり授かるおもひ日記買ふ 頰ずりの子は目を閉ぢて十三夜 一礼の影うつくしき春障子 手をついて机離るる春ゆふべ 満天の星みがかれて雪のあと 雛の間を灯せば人のぬくみあり 手庇に富士引きよせて茶摘かな 頰杖の指のつめたき白秋忌 日常の生活の景がどれもさりげなく詠まれている。星野立子の俳句のような素直さがあって読んでいて気持ちがいいのだ。著者のゆったりとした体質が読み手のこころを解きほぐすかのようだ。 私の滋酔郎師匠の一番好きな句は ものの芽や人にやさしくしたくなり 滋酔郎 でした。 二十歳で結婚し、金婚式も過ぎた今日、四人の娘と九人の孫に恵まれ、波瀾にとんだ夫の人生を共に歩み、いま一句一句を読み返してみると、この『飛天の笛』は、私の人生そのものでした。 長い「あとがき」の一部のみを引用した。 この句集の担当は愛さん。 新涼や拭きかさねゆく皿の音 この句が好きだと愛さんが著者に申し上げたところ、「ふふふっ、主婦の句ね」と言って石橋万寿さんはにっこりされたという。カバーに是非とも「笛を吹く天女を」ということでご自身でその絵を描かれた。 繰り返しになるが、わたしはこの句集が好きだ。技巧的なうまさももちろんあるが、それよりもこの句集の背後にある著者のおおらかな気息が好きなのかもしれないとおもった。 それをあらわす俳句を一句紹介すると、 時かけて春着の帯を解きにけり この「時かけて」ということばがいい。 駘蕩たる時間。 やっぱりいい気持になる……。 で、 わたしの日常は駘蕩たる時間などは決してなく、言ってみれば疾風怒涛の連続だ。 だって朝から働きはじめてもういい歳をしたおばさんが、まだ仕事場でパソコンのキイをたたいているなんて、もっちろん夕飯だってまだ食べてない、今夜は牡蠣フライだけどこれから帰って自分で揚げて作ってあるトン汁と食べるのだが、その前にいくつかやらなければならないこともあり、こんなに頑張っているわたしってつくづくロックだと思うよ。 ああ、お腹すいた…… まさか、わたしの牡蠣フライ、全部食べちゃわないでしょうね!! 無かったら、ただじゃ置かないからねっ!! あーあ、 「時かけて」の句の良さがわかってんかな、わたし……。
by fragie777
| 2011-11-11 21:15
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