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12月3日(金)
豪雨と突風のあとの今日のあたたかさって、どうよ、思わず身体が油断してしまいそうだ。 今日、わたしの郷里では秩父夜祭りが佳境にはいる。 凍てつく寒風のなかを荒くれ男どもが酒臭い息を吐きながら、団子坂とよばれる坂を一気に山車を曳き上げる、坂の上には何台もの山車やら鉾が結集して何百もの蝋燭が夜空を輝かす、という一大イベントだ。 しかし、こんなあたたかさでは男どもも気合いも入らないだろう。 小さかった頃、父を先頭に従兄弟たちやら兄弟やらと大勢で群衆にまぎれながら、凍星を見上げたことはもう遠いむかしのこととなってしまった。 しかし、目をつむればドドドドドドド……と寒神をなだめるような激しい太鼓のお囃子が腹の底から聞こえてくる。 日頃気取っているわたしの中に荒くれたものがあるとしたら、この秩父の屋台囃子を聞いて育った故だろう。 これを聞けば血が騒ぐのだ。 いいこと、 だからわたしを舐めてはいけませんよっ。 秩父育ちのヤクザなスピリットが黙っちゃおりませんぜ……。 オーッホホホホホホ……。 新刊句集を紹介したい。 森須蘭第二句集『蒼空船』。著者の森須蘭(もりす・らん)さんは、わたしとは違って小さい頃は病弱でいまも繊細な身体をかかえている方だ。そんな繊細さはその作品にも表れている。 息つぎのここから花の息づかい 紙風船ほどの持病と付き合えり 耳うちの耳から壊れゆく冬日 こめかみに集まる万緑の不安 鎖骨から寂しくなりぬ天の川 人の世に虹に小さな傷があり コップ持つわたしの沖へ麦の秋 背中ひりひり初蝶が通ったらしい 森須蘭さんは、かつてふらんす堂で句集『ナイトフライヤー』を刊行した高遠朱音さんのお母さまに当たる方だ。今回の句集には森須さん自身によるイラストが寄せられているが、高遠朱音さんと妹の宮坂翠さんのイラストもこの句集を飾っている。 俳句は言葉を通して思いを映像化するが、彼女の場合、直感的な映像の世界が先に形成され、それを言葉を用いて俳句化している。言葉を通してしか想いを伝達することが出来ない、というのは錯覚である。この世は言葉よりもっと大きなもので成り立っている。そう思って彼女の俳句を読み直すと、従来の俳句とは違った地平が見えてこないだろうか。 序文の前田弘さんのことばである。 かたつむり一生水平線にいる 春の弾力男根林立していたり 針金ハンガー並べておりぬ遅日かな 人体を斜めに抱いて来る西瓜 いぬふぐり空に窪みの残るかな 私小説の危うさ やはり火事ですよ 俳句の中の「季語」とは、感情の発露の「きっかけ」に過ぎなかったからだ。季節の中で生まれる感情も確かにあるが、季語に凭れない句や無季の句、十七文字の形式をかなり壊してみることも私の表現方法の一つだった。「俳句」という、その形式を継承しつつ、そこから自由になってみる事も私には必要だった。俳句に関わらず、私の描くイラストもそれに数えられるのかもしれない。 「あとがき」の著者のことばだ。「俳句」という形式を継承しつつ、そこから自由になってみる。実験的な意欲的な試みである。 花吹雪私の庭が疾走す 冬の蝶どちらから動いても 恋 朝顔やしばらく惑星の域 本書に於ける森須蘭は自然に蘭風の口誦的な述部が修飾語をもって特色とする。青春期までに身につけた地域の共同体のなかで、言葉の古層は幼児から少女期に修得した体験の残映であろう。さらに言葉と共に成長した知識、教養、知能、就職、結婚等、社会の共通項によって高度な論理体系になじみ、その意思は試されてゆく。言葉は葛藤し、混乱と融合をくりかえし森須蘭になっていった。当然、甘さと厳しさが同席し、言葉は精度を増した。 そこに、この句集が上梓されたのである。 とは、跋文の川名つぎおさんのことばである。副題は「森須蘭という風景におりてゆく」とある。 「蒼空船(そらふね)」という句集名、カバーをかざるイラスト、それもまた森須蘭の世界を構成する大事な装置である。この表紙絵は「秘蔵っ子の二番目の娘が描きました」と担当の愛さんに語ったという。 母の日の家中の紐ややこしい なんか分かるような気がする「ややこしさ」である。 今日はこれからちょっと「ふらんす堂句会」の「高柳克弘教室」をのぞくつもりである。 若き俳人の高柳さんのご指導ぶりを拝見しつつ、スタッフのPさんがちゃんとやっているか、チェックをするつもり。写真が撮れるようだったら撮ってあとでご紹介しましょう。 一度家に帰ってから吉祥寺に行くつもりなので、今日はブログを早く書いてみた。 昨日は酔っ払いながらブログを書いたのでヘンなことを書いたんではと今朝おそるおそる確認したところ、まあなんと舌足らずな文章を書いていたことよ、と思って恥ずかしくなった。 えっ、 酔っ払っていてもそうでなくても舌足らずだって……、 おーおー、言ってくれるじゃない。 そんなこと言うと秩父生まれの荒くれ血潮が黙っちゃいませんぜ。 お客さん…… んじゃ、これから家に戻って猫たちにご飯をあげて吉祥寺に向います。
by fragie777
| 2010-12-03 18:14
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