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4月13日(火)
昨日とはうって変わって快晴の夏を感じさせるような一日となった。 「ふらんす堂通信」編集期間のいまやまっただ中にある。 みんなすごい密度の濃い仕事をしている。 スタッフ・カトさんの助っ人となった優明美さんは、原稿のとりたても厳しくわたしの目の前の机ではにこやかに笑っているのに、ある時「編集後記、160字で○日までにお願いします」というとりたてのすましたメールが優明美さんよりスタッフいっせいに届いたりする。みんな大慌てで期日を守って書いているようだ。 「気が弱いので、面とむかって言えないんです。」と優明美さんは言うが、いいや、いいや、わたしはそうは思ってないぞ……。 「じゃ、家に帰ってさ、目の間にいるダンナにもメールで言いたいことを言うわけ?」 なんて、わたしはいやな中年女だから突っ込んだりする。 「まさか、しませんよ…」と笑っている。 ほかのスタッフたちはそういう訳でもうちゃんと編集後記を書いたのに、わたしはまだ書いていない。このブログを書いたら書くつもり。 さ、はやく、このブログを書いてしまおう。 好評の連載サイト「草のこゑ」は、今回は対中いずみさん。 対中さんは、俳誌「ゆう」の編集をされていたときに、田中裕明さんと一緒に桂信子さんにお目にかかりに行かれたことがあると言う。 「記憶力とお声のしっかしておられることに感嘆致しました」といただいたお葉書にあった。 対中さんは、作品を鑑賞して桂信子の向日性について触れられているが、生きることにまことに前向きな姿勢でおられた桂信子という俳人のひとつの特質をよくとらえていると私はおもう……。 亡くなられる前の数年間にわたって、バレンタインデーにはチョコレートをお贈りしていたのだが、すごく喜んでくださって、 「赤ワインを飲みながらおいしく味わってます」 とすぐに絵ハガキをくださった。 チョコレートに赤ワインとは、さすがモダンな桂信子さん、とわたしは感嘆したのだった。 今日は素敵なものをいただいた。 数年前にふらんす堂よりエッセイ集『ペーパーウェイト』を刊行された愛媛の松本秀一さんよりだ。 少し前に愛媛でおこなわれた「オリジナル装幀展」に出品された作品のひとつを送ってくださったのだ。 封筒より取り出すと、それは瀟洒な本のカバーが出てきた。タイトルは「坪内稔典句集Ⅱ」とある。 「『プレゼントプルーフ』の刷りですが、ご笑納してくだされば、うれしいです」とお手紙にある。 「プレゼントプルーフ」って何だ? エッチングのように見えるけど違うのかな……。 ともかくも用紙の手触りと風合い、色、申し分なく、版画の作品もきわめて繊細で、文字のレイアウトも大きさも色もすてきだ。 こんなカバーで装った本を創ることができたらどんなに素晴らしいだろう……。 人の手がつくりあげていくものの重さと存在感。 ふわっと軽くてもズンとこころに響いてくるのだ。フィレンツェの文房具屋さんの午後のしずかな光のなかにそれはあっても少しも違和感がないような、中世からの石畳を歩いてきた人がふっと立ち止まりそのまえでほほ笑む、そんな時間を引き寄せるような作品だ。 わたしのとんでもなく散らかった収集のつかない、ボールペンやら蛍光ペンやら電子辞書やらノートやらが阿鼻叫喚している机上のなかでこの作品だけが静謐だ。 手をふれればそのあたたかな白と冷たくてやわらなか手触りが、わたしを癒してくれる。 しばらくうっとりとしていると、 「編集後記書きました?」ってスタッフの声がする。 わかりましたよ、わかりました、 もう、書きます。 これが、松本秀一さんの作品。 もっと写真の腕とカメラの機能がいいといいんだけど、どうしても暗くなってしまって、その魅力の半分も表現できない。 あら、いやだ、 いま気づいたんだけど、 わたし、 今日はおしゃれなゴルチエの網Tシャツを着てきたんだけど、 後ろと前が逆だ。 忙しいスタッフたちは誰も気づいていない。 もう、いいや、 今日はこのまま帰ってしまおう。 ああ、ダメだ、 編集後記があった。 さっと書いて こそこそと帰ろう。っと。
by fragie777
| 2010-04-13 19:10
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Comments(2)
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