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1月28日(木)
武蔵野の里山などを歩いていると白鷺をよく見かけて、そのまばゆい白さにはっとして近くから写真におさめたいって思うのだが、なんせ望遠カメラではないのでこんなところが限界だ。 忍び足で近づいていっても、さっと飛び立って行ってしまう。 「yamaokaさん、よくわかんないんですけど、電話です」とPさんに受話器を渡される。 「ええ、何?」 「なんだか角川短歌賞の……って言ってますけど、」 誰だろう、と思いながら電話をとると、 「あのう、ブログ見ました。角川短歌賞を受賞した山田航です」 「あれえー、ブログ見たんですかあ」自分で書いておきながら、まさか山田航さんがご覧になっているとは思わなかった。わたし大いにあわてる。 「ええ、ありがとうございます。でも僕の髪形がおかしいですよね」 「ごめんなさい。変な写真で……」 ってそんな具合でわたしははじめて山田航さんと電話でお話したのだった。北海道にお住まいの山田航さんであるが、今日は東京の友人のところから電話をされているという。訥々と受賞のあいさつをされた山田さんだったが、電話のむこうの山田さんも訥々とした好青年だった。「一度ぜひ仙川に遊びにいらしてください」って申し上げると「ええ、是非に!」と若々しい声がかえってきた。 新刊句集ができあがる。 かつてふらんす堂から第一句集『籠枕』を刊行された井手千二さんの第二句集『足跡』である。井手千二さんは、俳誌「南風」(山上樹実雄主宰)同人である。 「あとがき」のことばがしみじみといい。 「喜寿を目前にして初句集『籠枕』を出版したのは平成八年のことでした。今九十歳になって第二句集『足跡』を世に出す運びとなり感慨無量なるものがあります。」 てのひらの隙間よろこび春の水 下萌えぬ子等よ組打ちなどせぬか 最初のページに収められた二句である。こんな瑞々しい作品を収録した九〇歳の方の句集であるなら、歳をとることもまたなんと素晴らしいことだろうって思わせる句集である。 青空に初蝶といふ黄のチョーク 仏桑花神もいくさも沖より来 風光る折られて神は翼持つ 冬蝶の死して鱗粉ゆたかなる 薄氷にざらざらと日の在りどころ 子は母を風船は子を離れたがり この自在な感覚を主宰の山上樹実雄氏は「豊潤な詩心」と言う。 「〈俳諧自在〉を弁えた作者の老いていよいよ豊潤の詩心。それは戦という暗い体験の切々の思いを籠めて生きてこられた果の、人間への深いいとおしみから生まれた俳と諧である。」と山上樹実雄氏は帯文に書く。 「井手さんの作品は本当にいいんです。」と山上氏はなんども電話で担当の愛さんにおっしゃった。 戦争体験を通過した人間にしか分からない「生者への思い」というものがあるのだ、きっと。 人間に飯食ふ習ひ油照り 男にも伏目ありけり波郷の忌 去年今年一神教徒殺し合ふ (イラク戦争) この句集『足跡』は、「南風シリーズ」の第一回配本として刊行。ハンディーなペーパーバックスタイル。装丁はPさん。挿画のうさぎが気にいっているらしい。このカットを毎回かえていくことになるのだが、Pさんこの挿画に力をいれるということだ。 薫風のベンチ何から話さうか お客さまがお二人みえる。 野上牧子さんと、娘さんの佳子さん。佳子さんはドイツ在住で一時帰国されている。 佳子さんより先週末にドイツよりお電話をいただいた。童話を出版なさりたいとのこと。 「出版社は沢山ありますが、母の友人の長谷川祥子さんの句集『野外奏』の本がとても美しいので、こういう本にしていただきたくて」と、お電話で話された。句集『野外奏』は、フランス装の金箔をふんだんに使った美しい本だ。 午後にお母さまと一緒にご来社されいろいろと相談をされて帰られた。2月のはじめにはドイツに帰国されるという。 『ゲド戦記』の世界を思わせるような不思議な静謐さにみちた童話集である。
by fragie777
| 2010-01-28 19:05
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