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10月14日(水)
このブログを書き始めたわたしの目の前にさっきスタッフのカトさんが、ドサンとふらんす堂通信のゲラを置いていった。「もう、みんな見ましたからあ…」って、わかりましたよ、あとはわたしが見ろっていうことなのね。向こうの部屋からは、カトさん、優明美さん、緑さんの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。 こっちの部屋のわたしにはやらなくてはならない宿題の山。 フウーッ。 さっ、ともかくもこのブログを書いてしまおう。 今日はスタッフの新米Pさんを連れて、八王子の病院へ俳人の綾部仁喜先生をおたずねした。いつものように、藤本美和子さんに車でひろって貰う。藤本美和子さんは、9月に句集『跣足』につぐ第二句集『天空』(角川コミュニケーションズ刊)を刊行されたばかりだ。わたしもいただいたのだが、とてもいい句集である。評判もとても良い。超多忙のはずの藤本さんであるが、いつもこうして親切にご一緒くださる。北野駅で待っているとさっそうと黒のマーチを運転して来た。Pさんとわたしはさっそくに乗り込む。 「今日は、yamaokaさんたちが来るっていうこと、先生にお話ししてないのよ」って藤本さん。 およそ5カ月ぶりでお目にかかる綾部仁喜氏は、大変お元気そうで突然にうかがったわたしたちをあたたかく迎えてくださった。四人部屋の奥に氏はおられるのだが、ほかの方々が天を仰いでひたすら寝ている状態のなかで、おひとりだけ矍鑠と生気にあふれているように見えた。しかし、藤本さんに伺うとこの何年間かに同室の方々が次々と亡くなられていったそうだ。そういう人たちの死をみつめながらの綾部氏の病室でも日常を思うと、なんとも氏の精神力の強さを思わずにはいられない。 今日は俳句のことだけでなく、ふらんす堂のあり方や、これからのことなど経営者としての悩みなども先生にぶっつけてみた。そいうことにも、的確に応えてくださる。 「……江戸時代の書肆はそういう姿勢を持っていた…」あるいは、 「江戸の古い商家の家訓はみなそこをおさえている…」など、つぎつぎに筆談のメモを渡して下さる。 アドバイスが江戸時代のものによる、というのが説得力がある。古きに学べということだ。焦る気持をおさえ、じっくりと考えやりなさい、ということでもある。 ベッドの上のみの日常であっても、わたしが娑婆であくせくしているその姿がよくお見えになるらしい。 焦ったり迷ったりしていた心がストンと落ち着いた。 「先生、また参ります」と握手をするとその手が力強く温かかった。 大きく励まされてわたしとPさんは病室をあとにしたのだった。 お元気そうな綾部仁喜先生と藤本美和子さん。 新米Pさんは、帰りの電車で、感極まったように、 「綾部先生がおっしゃったこと、逐一わたしがおもっていたこととおんなじでその通りだと思いました。いちいち納得しました」 って、ちょっと生意気なんじゃない、Pさん! 今日の船団ホームページは、後閑達雄句集『卵』より。 案山子より深く帽子を被りけり 「一言で言えば、屈託の句」と塩見恵介さん。たしかに、深く帽子をかぶった作者の鬱屈した気持が伝わってくるようだ。そしてちょっと切ない。 句集『卵』は、読む人を感動させるようだ。何人かの人からそんな声も聞いた。生意気なスタッフのPさんは、句集『卵』は「人のこころに寄り添ってくる俳句」だという。「人のこころによりそいながら、それがいつの間にかわたしの気持になるような…」と。
by fragie777
| 2009-10-14 19:22
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