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10月6日(火)
出社前の大分はやい時間に電話が鳴った。 「ねえ、あなた読んだ? 朝日新聞の天声人語?」 友人からだ。 「ううん、まだ読んでない」と答えると、 「載ってるわよ、田中裕明さんの俳句が…」 友人は、俳句の世界とはなんの関係もないのであるが、わたしが常日頃、仕事の話をしたりするので、また、このブログを読んでいたりするので、こうして電話をくれたというわけだ。さっそく新聞を読んでみる。 ある政治家のことにふれながら、「亀鳴く」という春の季語を読んだ俳句が二句引用されている。そのひとつが田中裕明さんの「亀鳴くや男は無口なるべしと」、もうひとつが少し前になくなった成田千空さんの「亀鳴くや一升瓶に手が伸びる」の俳句だった。 あらまあ、こんな風に引用されるものなのね、しかも「亀鳴く」という季語とは、などと思いながらちょっと興味ふかく読んだのだった。 「グラシン」ってご存じだろうか? ふらんす堂の書籍には多く登場するフランス装などの時にもちいる本をやはらかく包む薄紙のことである。 10月からふらんす堂の書籍を管理してくれることになった倉庫会社さんでは、「グラシン神話」が出来つつある。倉庫係さんたちは「グラシン」という言葉にただ胸をおどろかせ、まるでこの地上に舞い降りた美しい天使のようにそれはひそひそと語られ、それをどう扱ったらよいのかみなドキドキと戸惑っているということなのだ。つまり、これまで多くの書籍を管理してきたこの倉庫会社では、「グラシン」という言葉は存在せず、それがいったいどんな魔法の粉をかけなくてはいけないのか、とんとわからないということなのだ。 「グラシン…」「グラシーヌ」「グラシング…」などとグラシンは変容し、かすかに向こうが透けて見えるこの薄紙の魅力に、ただわけもわからず、うっとりとしているらしい。 で…、ふらんす堂の精鋭部隊が埼玉県の川口市にあるこの倉庫まで遠征にいって、この「グラシン」の扱い方を披露してくることになった。精鋭部隊はもちろん律子隊長に優明美中隊長、そしてP兵卒の三人である。 なにしろ「グラシン」はふらんす堂の命である。爪を切りそろえ、ハンドクリームをたっぷり塗った指でしなやかに繊細に扱わなくてはならない。任務の遂行は命がけである。 わが精鋭部隊に大いに期待したい。 詩人の八木幹夫さんによる「ぬばたまの夢」を更新する。 タイトルは「二上山」。詩の冒頭に「神風の伊勢の国にもあらましを何しか来けむ君もあらなくに 大伯皇女」の歌が引用され、リズミカルに恋歌が展開していく。枕詞は「神風」。神風はまさにいにしえから現代へと吹き渡る。 有働薫さんによる「詩人のラブレター」を更新。 今回は、ロートレアモン伯爵である。(この名前をペンネームとしたロートレアモンは実際には貴族ではなかったらしい。) かの有名な「ミシンとコウモリ傘との、解剖台のうえでの偶然の出合い」の詩句がうたわれた『マルドロールの歌』からだ。この詩句ばかりがひとり歩きしてしまって、実際の詩は案外知らない人が多いのではないだろうか。有働さんはその解説にこう書いている。「作品にはこの異国育ちの青年の孤独と生命の燃焼の激しさが余すところなく定着されています」と。24歳で夭折したロートレアモンの魂の衝撃を、この「詩人のラブレター」でわたしたちは知ることができるのである。 ちょっとやさぐれた兄ちゃんという感じ……。
by fragie777
| 2009-10-06 18:17
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