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8月19日(水)
谷保天神のうらの梅林のお店屋さん。 この日は残暑がきびしく氷水でも飲みたい一日となった。 「ウフフフフ……、ビニ本だって」と愛さんが笑う。 「えっ、何…」 「『鷹』8月号に『昼寝の国の人』が取り上げられてるんですけど、ビニールに包まれていたので、ビニ本だそうです。笑っちゃう…」 「ああ、確かにビニ本だよね」 「ふらんす堂はビニ本が多いですよ。『富士』とか、『田中裕明追悼』とか。」とPさん。 「本当だよね、ビニ本多いよ…」って呑気に笑い合う午後のひととき。 その、「鷹」8月号の黄土眠兎さんという方による『昼寝の国の人』の紹介はこんな風にはじまる。 「本屋でビニールに包まれていた。中身が見えない。ビニ本。手がかりは『田中裕明を読む』という副題だけ。怪しすぎる……が、買った。人目につかないところでそっと取り出す。すると、そこから出てきものは…」という書き出しである。そして、 「本書は、ふらんす堂のネットサイトと連動しており、ネットで若手の裕明句の鑑賞文を読むことができるが、本で味わいたい作品だ」 と結ばれているのが、何よりもうれしい。 新刊句集が一冊出来上がる。 ふらんす堂精鋭叢書 Serie de la neige の一冊として、山西雅子さんの句集『沙鴎』が刊行となった。集名の「沙鴎」とは、「杜甫の五言律詩『旅夜書懐』の最終行『天地一沙鴎』によります。十代のころに出会って以来、忘れがたく胸に住み着いている一羽の鳥です」と「あとがき」に山西さんは書く。このあとがきが象徴しているように、山西雅子さんは、そのこころに深く蔵するものをもち、彼女の心に触れた出会いをいつくしみ大切にする方だ。そのことが作品のすべてに、ある奥行きと陰影をなげかけている。 封筒の中の冬日のただ遠く 大阪に友春の月あればこそ 霜晴や二十日鼠を手に包み 小満のみるみる涙湧く子かな ゆるやかに深く青蘆原吹かる 風呂吹やここに坐れば夜の川 栞を中田剛さんが書かれているが、この栞もまた、山西雅子さんの作品世界とよく響き合っている。中田さんは山西さんのこころにあるふかぶかとした悲しみに共鳴しながら、山西雅子の俳句の前に立ち、自身をもさらしている。この栞は一読後、深い余韻につつまれるいっぽう作品が内包するものにわたしたちを立ち止まらせる。そしてうっすらとした悲しみをともなったざらざらしたような感触がのどのあたりに残る。 大切なあらゆるものを身の内に丁寧にたぐりよせながら山西さんの詠む作品の輪郭はくっきりとしている。句集全体にさりげなく配された子供を詠んだ句にわたしは特に心を惹かれる。 桔梗や子の踝をつよく拭き 泣初の両手握つてやりにけり 子供にも昔がありて椎の花 腰骨に子を抱きにゆく夏野かな 秋風の二階を走る子供かな 装丁は、静かな光をたたえた波をイメージしているが、山西さんの句集を読んでふたたびそこに目をとめると、きっと一羽の鴎が飛来してくるのではないかと思う。 鳥と鳥会ひて飛び去る春の夢
by fragie777
| 2009-08-19 19:27
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