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6月13日(土)
休日であるが、さっきまでスタッフの律子さんがいて、「ふらんす堂通信121号」の投句の整理をしていた。 いよいよふらんす堂通信121号へむけて編集作業がはじまりつつある。 精鋭俳句叢書の serie de la line(月シリーズ)の新刊句集が出来あがってきた。 金原知典(きんばら・とものり)さんの句集『白色(はくしょく)』である。昭和37年生まれということだから、今年47歳となる。俳句をはじめてから10年目にはじめての句集を刊行される。 俳誌「屋根」(斎藤夏風主宰)の同人で、序文は斎藤夏風氏、栞にはときどき吟行をともにするという岸本尚毅氏が寄せている。 羽のあと胴が横切り鬼やんま 雪片を見入ればおそく雪はやし なんというものの見方だろうか…。いや、見方というより見たものをどう表現するか、エクリチュールの問題なのかもしれないが…。 「彼の内なる美学は物の存在を絶対視して凝視することから沸き出てくるもの」であると斎藤夏風氏の序文にある。そして、「私は俳句は質実で剛健であれと思っている。…知典俳句はそれを生んでくれる」と。 岸本尚毅さんの栞のタイトルは「ときどき驚く」とあり、「金原さんの句集を読み進めていると、ときどき驚く」という。そして俳句が次々と挙げられ、どう驚いたかを書きしるす。とても面白い。どんな作品があげられているかはここには書かない。ぜひ栞を読んで欲しいとおもう。 わたしはこの句集をよんで一種の爽快感をあじわった。一瞬の時間のなかにある永遠の時間というものを作品のなかに思った。作品はスピード感があり、それでいて気息がゆったりとしている。作品をよむ人間のこころに余計なものを呼び込まない。それが魅力だ。 白椿いつか日向に落ちてゐし 歩む馬見ながら歩む秋の風 デパートの中はきらきら夕時雨 虫の声外なる闇を広げゐる 夕波や花はすこしの百日紅 昼過ぎの明るさかなし冬に入る 「あとがき」の言葉がまた力強い。 「時間には過去から未来へと一方向に流れる時間と、春夏秋冬を繰り返す循環的な流れがあり、この二つの時間は共に絶えず流れ続けているので、私たちが生きて目にするものとの出会いは常に一期一会だ。そして、私たちが一方向の時の流れによって避け難く老いてゆく一方で、自然界ではそのこととは係りなく、冬の後には春が来て百花が咲き、諸鳥が囀る。この句集の構成を春に始まり、春に終わる様にしたのは、春は必ず再生する、という真実に対する感動からだ」と。 集名の「白色」は、句集をまとめてみて、「一番多く句に取り入れた色は白」であったことによるとのことだ。 句集を一貫してながれるすがすがしいまでの清潔感にぴったりの句集名であると、わたしは思う。
by fragie777
| 2009-06-13 17:58
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