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2月9日(月) 黄鶯睍睆(うぐいすなく)
最近ふらんす堂から歌集『1/125秒』を刊行された永田淳さんはご自身でも京都で青磁社という詩歌専門の出版社をやっておられる。そこの青磁社の刊行で歌人の河野裕子さんの『母系』という歌集を読みたくて購入した。 一昨日とどく。 すでに誰もいない仕事場ですこしずつ読みすすむ。 長男や長女はさみしいものだから君にあけておくわたしの右手 菜の花はなんでこんなになつかしい 昨日は雨で明日は雨で オトウサン、オカアサンといふ人をこの世で見送り「それから」が来る うっすらと悲しい気がしてきて目をあげれば、蛍光灯の白い光ばかりが煌々としている。 河野裕子さんは、永田淳さんの母上だ。 しんしんとひとすぢ続く蝉のこゑ産みたる後の薄明に聴こゆ 初期のころの作品だ。永田淳さんを出産したときの歌だという。河野裕子という歌人を知ったのもこの歌によってだった。わたしもちょうど出産にのぞもうとしているときだったか……。 装丁もシンプルかつ瀟洒で「これは凝りました」と電話口で永田さんが言うのもよくわかるいい造本の本である。「やるなあ…」と思わずわたしは言う。お母さまのために懸命に歌集をつくる永田さんがいる。それは、歌集『1/125秒』のなかで息づいていた永田淳さんの顔でもある。 「よし、負けてられないぞ…」って受話器を置いたのだが、くやしいけどつくづくと内容、造本、装丁ともどもいい本だ。 今日はお客さまが一人あった。 俳誌「犀」(桑原三郎代表)と「遊牧」(塩野谷仁代表)に所属するかたで、久野康子さん。 句集のことで相談にみえられる。 京王線にははじめて乗ったという千葉よりいらした久野さん。 今日の讀賣新聞の長谷川櫂さんによる「四季」は、高野美智子さんの句集『水無月祓』より。 流氷の胸に寄するといふことを 「といふことを」という叙法にもの哀しい余韻がのこります。シンプルな言い方で、こころ深いところまでとどく……河野裕子さんの短歌の世界にも通じていく、なにか…。
by fragie777
| 2009-02-09 20:21
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